これからの日本では経済成長は期待薄?

 筆者が個人的にとても気になる点があります。それは、ケースⅠからⅥまでの試算の前提となる、実質経済成長率がかなり低いことです。

 ケースごとの実質経済成長率は以下のとおりです。

・ケースⅠ 0.9%
・ケースⅡ 0.6%
・ケースⅢ 0.4%
・ケースⅣ 0.2%
・ケースⅤ 0.0%
・ケースⅥ ▲0.5%

 最も経済成長が順調に推移するとされるケースⅠでさえ、実質経済成長率が1%にも満たない低さなのです(2018年度の実質成長率は0.7%)。これは、日本政府が今後の日本の経済成長はほとんど期待できない、と言っているようなものと筆者は認識しています。

 そして、厚生労働省ウェブサイトに掲載されている「2019(令和元)年財政検証結果のポイント」には、以下のような記述があります。

「経済成長と労働参加が進まないケースⅥでは、機械的に調整した場合、2052年度に国民年金の積立金が無くなり、完全賦課方式に移行。ただし、ケースⅥは、長期にわたり実質経済成長率▲0.5%が続く設定であり、年金制度のみならず、日本の経済・社会システムに幅広く悪影響が生じ、回避努力が必要」

 公的年金は、国民から集めた保険料を運用し、その運用益を年金の支払いに充てています。

 ところが、経済成長率がマイナスになれば、当然株価にも悪影響を及ぼします。下手をすると、年金積立金の運用もマイナスとなり、年金の給付がさらに厳しくなってしまう可能性も否定できません。ケースⅥではおよそ30年後には年金積立金自体がなくなってしまうと言っているのです。

 経済成長率がプラスであっても、それが1%に満たない水準であれば、株価の長期的な上昇もかなり厳しいのではないでしょうか。