5年に1度発表される公的年金の財政検証。ここから見えてきたのは将来の年金給付の水準が今より低下すること。そして資産運用をするうえでの新たなリスクでした。

公的年金の財政検証が発表!

 8月27日、厚生労働省から財政検証が発表されました。これは、5年ごとに作成される、公的年金(国民年金及び厚生年金)の財政の現況および見通しを示したものです。

 言い換えれば、公的年金が今後も持続可能かどうかを定期的に確認するための報告書です。

 ※厚生労働省のウェブサイトに詳しい資料が掲載されています。

 この財政検証を「個人投資家目線」で見ていきます。

将来は所得代替率が50%を維持できない!

 ここで一つ覚えておいていただきたい用語があります。それは「所得代替率」です。これは公的年金の給付水準を示す指標で、現役男性の平均手取り収入額に対する年金額の比率により表されます。

  所得代替率 =(夫婦2人の基礎年金 夫の厚生年金)/ 現役男性の平均手取り収入額

 政府が国民に対して一応の約束をしているのが、「所得代替率50%の維持」です。現役世代の収入の50%は、年金によって賄うようにしよう、というものです。

 現状は、この所得代替率が61.7%となっていますが、これが今後どう変化するかの予測を、経済成長率等の推移をもとにケースⅠからケースⅥまで6パターン挙げています。

 このうち、最も経済成長が好調に推移するケースⅠであっても、2046年度に所得代替率は51.9%に低下してしまいます。さらに、ケースⅣ~Ⅵにおいては、所得代替率50%を維持することができず、ケースⅥでは将来的に38%程度まで下がってしまうと試算されています。

 ただ、これらの試算も、物価上昇や賃金上昇が今後も生じ続けるという前提です。そのため、エコノミストや有識者の中には、これでも検証結果は甘すぎると指摘している方もいます。