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米中貿易摩擦が一段と激化し、混迷の度合いを深めているほか、「合意なき離脱」が現実味を増す英国の欧州連合(EU)離脱など、先行きが見通せない問題が増えており、金融市場のボラティリティが高まっています。こうした経済の不透明感を表す指標として『経済政策不確実性指数』があります。世界全体の『経済政策不確実性指数』は、6月に過去最高を更新するなど、極めて高い水準で推移しています。
【ポイント1】経済政策不確実性指数』は先行きの不透明感を示す
『経済政策不確実性指数』とは、政策の影響による経済の先行きの不確実性を示す指標です。米スタンフォード大学の教授らによって開発され、経済政策の不確実性に関する新聞報道の定量化、先行きに控える税制変更の数、エコノミストによる経済予想の不一致度合いの3要素で構成されています。
『経済政策不確実性指数』は、米国だけでなく、世界、欧州、ドイツ、英国、中国、日本など、現在25カ国・地域のものが算出されています。
【ポイント2】増加する世界の不確実性
世界経済の不確実性が増しているのは、米中貿易摩擦が一段と激化し、混迷の度合いを深めていることに加え、「合意なき離脱」が現実味を増す英国のEU離脱など、先行きが見通せない問題が重なったためとみられます。
足元の世界の『経済政策不確実性指数』は、統計算出開始の1997年以降でみて、かつてない高水準で推移しています。6月には342ポイントとなり、昨年末につけた過去最高を更新しました。7月も280ポイントと、極めて高い水準にあります。
【今後の展開】不確実性の増加はリスク回避の動きを示唆
先行きの不確実性の増加は、設備投資や雇用の減少など、主に企業活動の慎重化を通じて、実体経済へマイナスの影響を与えると考えられます。このため金融市場では、不確実性が高まると、投資家のリスク回避姿勢が強まりやすくなります。
世界の『経済政策不確実性指数』が過去最高水準にあることを踏まえれば、現状はリスク回避の動きの強まりに伴う株安や円高につながりやすい環境とみられます。特に、日本は世界最大の対外債権国であり、円が安全資産とみなされているため、円高の進行とそれに伴う株安には注意が必要と思われます。