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米中の貿易摩擦激化に伴う世界的な景気後退懸念や日韓の輸出規制の厳格化の影響などから、半導体市況の底入れ時期について不透明感が高まっています。こうした中で、国内の『半導体製造装置』企業大手は半導体市況の底入れを見越して投資を積極化しています。また『半導体製造装置』企業の株価も上昇基調にあります。企業や株式市場の見方の通り半導体市況が底入れしていくか注目されます。
【ポイント1】『半導体製造装置』販売額は前年比マイナス
日本製『半導体製造装置』の7月の販売額(日本半導体製造装置協会統計、3カ月移動平均)は前年比▲18.9%の153,070百万円となり、前年比マイナスが続いています。米中貿易摩擦の影響に加え、データセンター投資の一服やスマホの成熟化、データの保存に使うメモリ半導体の価格調整などが影響したとみられます。こうした中、『半導体製造装置』企業は大手中心に投資を積極化しています。
【ポイント2】東京エレクトロンなど大手中心に投資を積極化
東京エレクトロンは需要低迷時こそ、海外の競合に対する優位性を高める好機とみて研究開発投資を積極化します。この背景には、次世代通信規格「5G」向けなど半導体の中長期的な需要拡大は変わらないとの判断があります。2020年3月期の研究開発費は1,200億円と過去最大を計画、2022年3月期までの3カ年の合計は4,000億円と、直近3年の合計を1,000億円ほど上回ります。
日立ハイテクノロジーズは7月24日、新工場を茨城県に建設すると発表しました。総投資額は約300億円で2021年2月に竣工する予定です。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術や人工知能(AI)の普及が進み、半導体の需要は中長期的に拡大するとみて、生産能力を高める方針です。また、ディスコは長野県内に第2の製造拠点が将来必要になってくるとの考えを明らかにしました。用地を選定する作業を始める方針です。
【今後の展開】『半導体製造装置』の底入れは近い
不透明感が強い中で、『半導体製造装置』企業は大手中心に投資を積極化、株価も上昇しています。過去のシリコンサイクルをみると株価は販売の底入れに先行して上昇する傾向があります。また需給調整は過剰投資による供給超過が要因で、半導体需要はほぼ一貫して拡大しており、比較的短期で終了しています。「5G」やデータセンター投資など需要の裾野は広がっており、時期は少し前後しても底入れは近いとみられます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。