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 米財務省は8月5日に中国を『為替操作国』に認定しました。『為替操作国』とは、米国が、貿易で有利になるため自国通貨安に誘導していると判断した国のことを指します。米国は状況次第で『為替操作国』に対して関税引き上げなどを検討するとされていますが、中国からの輸入品の一部にはすでに追加関税がかかっていることなどから、今回の中国の『為替操作国』認定自体がもつ意味合いはあくまで象徴的なものにとどまりそうです。

 

【ポイント1】米財務省は中国を『為替操作国』に認定

1ドル=7元の水準を超える元安進行を問題視

 米財務省は8月5日に中国を『為替操作国』に認定したと発表しました。同日に人民元が1ドル=7元の水準を超えて下落したことについて、米財務省が、中国が輸出競争力を高めるために実施した人為的な通貨切り下げに該当すると判断したためです。今後、国際通貨基金(IMF)と協力して中国に為替介入を止めるよう求めるとしています。なお、米国が他国を『為替操作国』に認定するのは1994年以来となります。

 通常、『為替操作国』認定の有無は、年2回、米連邦議会に提出される為替報告書のなかで示されますが、今回は異例のタイミングでの認定となりました。

 

【ポイント2】米政権は『為替操作国』認定の判断根拠となる法律を使い分け

貿易黒字など3基準の充足が必要だが…

 今年5月の為替報告書では、『為替操作国』認定の3基準として、(1)サービス収支を除く財の貿易黒字:過去4四半期合計の対米黒字額が200億ドル以上、(2)経常黒字:同期間における経常黒字額が対GDP比で2%以上、(3)為替介入:為替介入による外貨の買い入れが過去12カ月合計でGDPの2%以上等、があげられました。中国が該当するのは(1)のみとなっていました。

 上記の基準は2015年貿易円滑化・貿易執行法によるものですが、今回の『為替操作国』認定は1988年包括通商競争力法に基づくもので、トランプ政権の対中圧力強化の強い意図が表れた形です。

 

【今後の展開】中国の『為替操作国』認定自体は象徴的な意味合いが強そう

『為替操作国』の認定後、米国は当該国に協議を求め、問題が解決しない場合、関税引き上げなどの制裁措置を検討するとされています。しかし、中国からの輸入品の一部についてはすでに追加関税が賦課されているほか、IMFが人民元相場について為替介入はほとんどみられないとの認識を示すなど、米国とIMFの足並みがそろっていません。したがって、『為替操作国』認定自体のもつ意味合いは象徴的なものにとどまりそうです。

 米中貿易摩擦については、9月開催が見込まれる米中閣僚級協議の行方や、9月および12月に発動が予定されている対中追加関税第4弾の動向などが注目されます。