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「景気ウォッチャー調査」、いわゆる『街角景気』とは、景気に敏感なタクシー運転手や小売店、メーカー、輸送業、広告代理店など、地域の景気の動きを敏感に観察できる立場にある約2,000人を対象とした調査です。7月の『街角景気』は、足元の景況感を示す現状判断指数(DI)、先行きを示す先行き判断DIとも前月から悪化しました。梅雨明けが遅れ低温多雨だったことが小売店などの客足減少をもたらした模様です。
【ポイント1】現状判断DIは前月比▲2.8ポイントの41.2と、大幅低下
先行き判断DIは▲1.5ポイントと、16年6月以来の低水準
2019年7月の『街角景気』によると、現状判断DI(季節調整値)は前月比▲2.8ポイントの41.2でした。景況感は前月から大幅に悪化し、18年1月以来、景気判断の節目となる50を下回っています。項目別では、家計動向関連の低下が目立ちました。梅雨明けが前年より2週間ほど遅れ低温多雨となったため、小売と飲食が大幅に悪化しました。また、雇用関連、企業動向関連も低下しました。消費増税を前にした節約志向の強まりや、米中貿易摩擦による輸出減などの影響が指摘されています。
先行き判断DIは前月比▲1.5ポイントの44.3と16年6月以来の低水準となり、先行きに対する慎重姿勢がうかがえます。項目別では、雇用関連の落ち込みが大きく、世界経済情勢の不透明感から、採用に関し製造業を中心とした様子見の広がりが指摘されました。
【ポイント2】現状のコメントは「節約」「不安」と「雨」
先行きは「節約」が急増
街角の声をより客観的に分析する、当社独自のテキストマイニングによる分析手法(*)によると、ウォッチャーの現状判断に関するコメントにおける単語の使用数は、引き続き「節約」や「不安」にかかわる用語が高水準で推移しています。他方、「雨」にかかわる用語が増加しており、天候不順が景況感に悪影響を及ぼしたとみられます。
先行き判断については、「節約」にかかわる用語が急増しています。「消費税」にかかわる用語は明確な増加基調を辿っており、増税への関心が高まり続けています。
(*)テキスト(文書)をコンピュータで探索する技術の総称。典型的な例として、テキストにおける単語の使用頻度を測定し、テキストの特徴を統計的に分析・可視化することで、背後にある有益な情報を探ることができます。
【今後の展開】“回復”に弱い動き、先行きも不透明感広がる
内閣府は『街角景気』について、「天候など一時的な下押し要因もあり、このところ回復に弱い動きがみられる。先行きについては、消費税率引上げや海外情勢等に対する懸念がみられる」とし、やや下方修正しました。7月の『街角景気』は、米中貿易摩擦や消費増税を巡る不透明感に加え、天候不順など一時的要因から一段と悪化しました。先行き判断の人手不足に関するコメントは4月以降大幅に減少しており、景況感の悪化が雇用環境に及ぼす悪影響には引き続き注意が必要です。