最低賃金を上げると生産性が高まる
これが長年かけて実証された事実なのです。
日本の最低賃金は諸外国の7割程度と言われています。先進国ではダントツの最下位。しかも諸外国では、人材評価と最低賃金がほぼ一致しているのですが、日本は人材の評価が高いのに、最低賃金が低い。評価と賃金に乖離(かいり)が大きいのです。搾取経済の証拠と指摘したくなります。
「韓国では最低賃金を引き上げて失敗したではないか」。そんな指摘が聞こえてきます。韓国が失敗したポイントは、わずか2年間で30%も上げたところにあります。海外の論文では、毎年12%以上上げると経済に悪影響を与えることが分かっています。それなのに昨年、韓国は16.4%も上げた。経済に悪影響が出るのは当たり前です。日本は毎年4~5%ほど上げていけば、再び経済は成長するはずです。
賃金を引き上げると失業者が増えるという懸念を指摘する人もいます。これも否定された仮説です。英国、ドイツ、香港、中国、フランス、ニュージーランド……いろいろな国・地域の最低賃金引き上げの結果を検証すると、失業率は高くなるどころか低下しました。英国は歴史的最低水準まで下がっています。
生産性を向上させないと誰かが破たんする
生産性を上げて所得を増やしていかないと、日本の未来はどうなるのでしょう。社会保障を劣化させれば世の中に貧困高齢者が増えて個人消費が減る。高齢者の社会保障を維持したままでは生産年齢人口に過剰な負担がかかる。そのどちらも避けようとすると国の借金が増えてしまう。高齢者が破たん、生産年齢人口が破たん、国が破たんの3つの選択肢しかありません。
日本の人材育成投資は2010年以降約0.5兆円と低迷しています。対GDP比では米国の2.1%(44兆円)対し、日本は0.1%にすぎません。人口は米国の3分の1なので、15兆円の補助金を出したとしても、あまりにも小さい企業が多すぎて、効果が得られにくい状況です。私が代表を務める小西美術工藝社が属する業界でも、30億円市場を20社で分け合っています。従業員3人という会社もあり、このような規模ではITの活用どころか、会計のパッケージソフトすら使う必要がありません。新しいことをしようとしても人材が足りません。補助金をいくら導入しても、小規模・中小企業が多いという根本的な構造にメスを入れなければ解決されません。
女性活用も同じです。従業員20人未満の企業の比率が高くなるほど女性活躍ができないという統計があります。さらに、現状の日本では、女性の収入は男性の約半分ほどであり、女性の労働者が増えれば増えるほど、全労働者に占める生産性の低い人の割合が増えることになります。この点も改善していかなければなりません。