中国制裁の伏線は、米国株の最高値?

 世界の金融市場は大混乱したが、トランプ氏には全て想定内だったのだろう。

 というのは、米国が中国製品に10%の輸入関税を掛けた場合、米国内での競争力を保つには人民元安・ドル高に誘導するのが手っ取り早い。米国は対中貿易戦争を仕掛けた時点から中国政府による人民元安政策をしばしば牽制しており、人民元レートの安値設定を予想していた可能性が高い。高関税を課すことで中国を為替操作に追い込む戦略だったと考えれば、人民安を仕掛けたのは中国ではなく米国とみた方が自然ではないか。

 一見唐突に見える対中関税第4弾の発表だが、伏線はあった。米国株の史上最高値更新とその後のFRB(米連邦準備制度理事会)の金利引き下げの「出し惜しみ」である。

 米国では大統領支持率と株価が強く連動する。しかも実業家出身のトランプ氏の周囲を固めるのは金融業界と軍関係者と言われ、株価の動向を政策運営に反映させる点では、歴代大統領の中で筆頭格だろう。