再び世界株安。トランプ大統領には想定内?
米国と中国の貿易摩擦が再燃し、8月5日は米ダウ工業株30種平均が今年最大の急落に見舞われるなど世界同時株安となった。6日のダウは6営業日ぶりに反発し、世界の株式市場はいったん落ち着きを取り戻した形だが、米国が対応を誤れば日本も含めた世界経済の混乱に陥りかねない。
混乱の発端はトランプ米大統領による中国への制裁関税「第4弾」の発動表明であり、混乱の原因は人民元レート低下による「通貨戦争」への恐怖感だった。
トランプ氏は8月1日に突然、中国からの輸入品3,000億ドル相当に9月から10%の関税を課すと発表した。中国政府は強硬姿勢に傾き、中国企業による米国産農産品の一部輸入停止に言及したのだが、これだけでは貿易摩擦の長期化が懸念されても、世界中で株式の投げ売りを誘うほどのインパクトはなかったかも知れない。
投資家が驚いたのは人民元の対ドルレートの低下である。中国の通貨当局が毎日公表する「基準値」が5日、1ドル=6.9225元の元安・ドル高に設定し、取引レートは市場で絶対防衛ラインとされてきた1ドル=7元の節目を2008年5月以来およそ11年ぶりに割り込んだ。
米政府はすかさず、中国が貿易のために通貨を操作しているとして「為替操作国」に認定すると発表した。中国政府は為替操作国の認定に反発しているが、中国人民銀行(中央銀行)は米国の保護主義に言及しており、米国に対抗する意図は明らかだった。
これを受けて金融市場はリスク回避一色に振れ、米ダウは767ドル安と今年最大の下げ幅を記録。欧州や中国、日本でも株価が下落した。韓国ウォンが3年半ぶりの安値を付け、フィリピン・ペソやマレーシア・リンギ、メキシコ・ペソなども新興国通貨も軒並み下落する一方、退避先通貨として先行される円が買われ、1ドル=105円台まで円高が進んだ。