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 米『雇用統計』は、米労働省が毎月発表する、雇用関連の経済指標です。『雇用統計』は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の決定に大きな影響を与えるため、金融市場は、その発表で大きく変動することが多く、最も注目される材料の1つです。2019年7月の『雇用統計』は非農業部門雇用者数の前月比が16.4万人増となり、事前予想の16.5万人増とほぼ同程度の結果となりました。

 

【ポイント1】雇用者数はほぼ予想通りの16.4万人増

雇用情勢は鈍化

 2019年7月の非農業部門雇用者数は、前月比16.4万人増と、ブルームバーグ集計による市場予想の同16.5万人増とほぼ同程度となりました。

 一方、過去分は5月が同7.2万人増から同6.2万人増、6月が同22.4万人増から同19.3万人増へと下方修正されました。3カ月平均では14.0万人と前月の17万人増程度から低下しています。18年の平均が22万人であったことからみて、雇用の情勢は鈍化していると見られます。

 鈍化の背景には、景気刺激策による昨年の上振れの反動や景気の減速、米労働市場が完全雇用の水準に近づいていることなどが考えられます。

 

【ポイント2】失業率は横ばい

賃金は上昇ながら来月は反動減も

 失業率は、前月から横ばいの3.7%となりました。

 賃金は前月比0.3%増となったうえ、前月分が上方修正されたため前年比は3.2%増と市場予想を上回りました。

 ただし、労働時間の減少により賃金が押し上げられていると考えられるため、来月以降に反動が出る可能性があります。

 

【今後の展開】米中対立激化による下振れリスクには警戒

 8月1日にトランプ大統領は中国からの輸入品3,000億ドル分に10%の追加関税を9月1日から課すと表明し、これに中国側も対抗する姿勢を見せています。1、2日の米国市場はリスク回避が鮮明となり株式市場が下落し、債券が買われて金利は低下しました。2日に発表された『雇用統計』を受けてやや債券が売られる場面があったものの、市場は『雇用統計』より米中対立の行方に関心を寄せています。

 トランプ大統領が表明した通り関税が引き上げられることになれば、企業活動への重石となると考えられます。FRBは7月に続き9月にも0.25%の予防利下げを行い、世界景気の減速や通商政策の不透明感に起因する下振れリスクに対応すると見られますが、米中対立が激化すれば生産調整が長引く可能性があるため、下振れリスクが警戒されます。