株式市場で三菱UFJの評価が低い理由

 それでは、なぜ、ここまで三菱UFJ株は低く評価されるのでしょうか。それには、2つ理由があります。

【1】低金利の長期化で、国内商業銀行業務の収益低下が続いていること。

【2】将来、フィンテックが高度に進化すると、旧来型の銀行店舗網が不要になるイメージがあること。

 上記の不安は、日本の銀行業界全体にとって、極めて重大です。国内商業銀行業務への依存が大きい地方銀行は、近い将来、軒並み赤字に陥る懸念もあります。特に、預金を集め国債を買うことで利ざやを稼いで来た中小金融機関にとっては深刻です。

 ただし、三菱UFJは、こうした厳しい環境下でも、高収益を維持していけると予想しています。実際、長期金利がゼロの今でも、純利益で9,000億円近くを稼いでいます。何が違うのでしょうか。

 三菱UFJは、海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・投資銀行業務などへの多角化)によって、高収益を保っています。それは、3メガ銀行グループ(三菱UFJおよび、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ)すべてに共通です。

 三菱UFJは、2019年3月末時点で、海外貸出金の比率が貸出金全体の42.8%を占めるまで拡大しています。低金利の長期化で、国内で預貸金利ざや(貸出金利と預金金利の差)が低下していることが懸念されていますが、海外では高い利ざやがとれています。前期の預貸金利ざやは、国内が0.8%、海外が1.34%です。その結果、前期の事業別営業純益に占める、グローバル事業(GCBとGCIBの合計)の比率は、30%に達しています。

 フィンテック普及に対する不安も、三菱UFJについてはやや過剰と思われます。銀行店舗の価値低下に合わせ、同社は店舗数を2023年度までに(2017年度比で)35%削減する計画を持っています。それと同時に、業務のデジタライゼーションを急速に進めます。私は、三菱UFJ自身が、将来フィンテックの有力プレイヤーの1つとなる可能性もあると考えています。