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 ボルソナロ大統領の最優先政策である『年金改革』法案は、7月10日の下院本会議で1回目の投票が行われ、379対131で承認されました。今後の審議は国会休会後の8月以降となりますが、下院本会議で賛成票が圧倒的多数を占めたことから、法案成立に楽観的な見方が広がっています。『年金改革』による財政改善効果は政府見通しの「10年間で約1兆レアル」は下回るとみられるものの、年内の成立が見込まれます。

 

【ポイント1】『年金改革』法案は9月にも上院本会議へ

上院本会議の投票が最後の関門

 今年2月に提出されたボルソナロ政権の最優先政策である『年金改革』法案は、4月の下院憲法司法委員会、7月の下院特別委員会を経て、下院本会議の1回目の投票で賛成多数で承認されました。

 今後、国会休会明けの8月以降、下院本会議での2回目の投票後、上院の憲法司法委員会、本会議においてそれぞれの審議・承認(上院本会議では6割以上の賛成、投票は2回)を経て成立の運びとなります。

 

【ポイント2】『年金改革』進展によって進む経済対策

財政改善によって経済政策の余地

 ブラジルでは社会保障関連支出が大きく、基礎的財政収支は2014年以降5年連続で赤字となっています。『年金改革』により、財政収支・政府債務が改善すれば、種々の景気刺激策を行う余地が生まれ、ブラジル経済を支えることができます。

 また、金融政策では、ブラジル中央銀行が先行きのリスク要因としてあげていた『年金改革』法案に成立の見通しが立つことで、中央銀行が利下げに舵を切ることが可能となり、景気の押し上げが期待できます。

 

【今後の展開】『年金改革』法案成立が経済再生への道を開く

『年金改革』法案の成立による財政改善効果は、政府見通しでは今後「10年間で約1兆レアル」前後とされていましたが、今後の審議の中で下方修正される可能性があります。但し足許ではこれまで市場で予想されていた6千~8千億レアルを上回ると見込まれており、『年金改革』が成功すれば、ブラジル経済の再生に大きく貢献するとみられます。

 下院本会議の1回目の投票で、賛成票が圧倒的多数を占めたことから、今後の投票についてもこの流れが大きく変わる可能性は低いとみられます。9月頃までに下院での採決、10月頃までに上院での採決が見込まれています。審議が順調に進めば今年秋頃に成立する可能性が高まっており、今後の審議の進展が期待されます。