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 工作機械は、主に「機械部品を必要とする形状・精度に効率よく加工すること」に使われます。工作機械の性能の優劣が、工業製品の競争力を左右し、日本企業は高い技術力を有します。また、多くの機械やその部品類は工作機械によって作られるため、設備投資の先行指標とみられています。6月の『工作機械受注』は米中貿易摩擦の影響などから下限とみられた1,000億円を下回り、底入れ時期が注目されます。

 

【ポイント1】6月の『工作機械受注』は1,000億円下回る

 日本工作機械工業会が7月9日に発表した6月の『工作機械受注』(速報値)は前年同月比▲38.0%の988億円となりました。好不況の目安とされる1,000億円を2016年10月以来、32カ月ぶりに下回り、マイナス幅も5月の▲27.3%から拡大しました。米中貿易摩擦の影響などによる中国向けなど外需の低迷に加え、内需の減少も拡大してきました。

 

【ポイント2】用途拡大などの構造的要因から受注は拡大基調

『工作機械受注』は、リーマンショック後の2009年には年間受注額が前年比3分の1以下の4,000億円台前半まで減少するなど従前は景気循環に伴い激しい変動を繰り返していました。

 ところが、2011年以降は景気の影響を受け変動はしたものの拡大基調となり、2018年には1兆8,000億円を上回りました。背景には中国などでの人手不足や賃金の上昇に伴う自動化投資の拡大に加えて、微細な加工が必要な電気自動車、有機ELなどへの用途の拡大により、高性能の日本製機械へのニーズが強まったことなどの構造的要因があります。

『工作機械受注』は2018年10月から前年割れが続いていました。構造的要因などから月間受注額は、1,000億円が下限との見方もあったため、6月のデータを受けて底割れを懸念する見方も出始めました。

 

【今後の展開】『工作機械受注』は受注の底を探る局面

 今後の『工作機械受注』については、米中貿易摩擦の改善の糸口が見えないため、どこまで減少するか不透明感は残ります。ただし過去の受注調整期間が18カ月程度であることや、人手不足や賃金の上昇に伴う自動化投資と電気自動車などへの用途の拡大は一過性の要因ではなく、国内大手は複数の機械をつなぎ合わせたシステムの提案に注力し受注単価も上がっていることなどからみると受注の底は近いと考えられます。