投資信託はファンドの中でさまざまな資産へ投資、ロボアドは口座の中でさまざまなファンドへ投資

 前回、ロボアドバイザーの運用手法は、年金運用スタイルのバランス運用と書きましたが、バランス運用といえば、投資信託にもバランスファンドがあります。何か違いがあるのでしょうか?

 運用の面から言うと、違いはありません。投資信託もロボアドバイザーも、株式等のリスク性資産と債券等の安全資産を組み合わせ、リスクを抑制しながら安定したリターンを追及するという運用スタイルは同じです。

 違いは、運用以外の面にあります。投資をするときの仕組みが違うのです。投資信託のバランスファンドは、ファンドの中でさまざまな資産へ投資を行います。一方、ロボアドバイザーは、口座の中でさまざまなファンドに投資をします。

 仕組みは違っても、結局、投資しているものは一緒なので、投資成果は同じではないかと思われるかもしれません。しかし、大きな違いがあります。それは課税の違いです。

 分かりやすく簡略化した説明をします。バランスファンドで、ファンドの中で投資している4資産の売却をした結果、以下のとおり、売却損益が発生したとします。この場合、4資産の売却損益の合計は+3万円です。しかし、バランスファンドそのものを売却しない限り、日本国内では課税されません。

バランスファンド(投資信託)
国内株式        売却益 +3万円
国内債券        売却損 -1万円
海外株式        売却益 +2万円
海外債券        売却損 -1万円
  合計  売却損益  +3万円 
=>バランスファンドそのものを売却しなければ、課税されない。

 次に、ロボアドバイザーで、口座の中で投資している4ファンドの売却をした結果、以下のとおりの売却損益が発生したとします。(売却損益の数字は、上記バランスファンドの4資産とまったく同じとします。)この場合、4ファンドの売却損益の合計+3万円に対し、課税が行われます。

ロボアドバイザー
国内株式ファンド     売却益 +3万円
国内債券ファンド     売却損 -1万円
海外株式ファンド     売却益 +2万円
海外債券ファンド     売却損 -1万円
      合計  売却損益 +3万円
=>売却損益+3万円に対し、課税が行われる。

 バランス運用を続けていれば、ポートフォリオのリバランスを必ず行いますが、投資対象がファンド(上記の例では、国内株式ファンド・国内債券ファンド・海外株式ファンド・海外債券ファンド)であるロボアドバイザーは、リバランスの度に売却損益が発生し、課税対象になります。

 バランスファンドが、リバランスで投資対象資産を売買しても、すべてファンドの中で行われ、ファンド自体を売却しない限り、売却損益が発生しないのとは対照的です。

 またロボアドバイザーは、投資対象の値下がりで評価額が投資元本を下回る元本割れの状態になっていても、個別ファンドの売却で利益が発生すれば、課税されます。投資をしていて損をしているのに、課税されるという現象が起きるのです。

 このように、課税については、ロボアドバイザーは投資信託であるバランスファンドに対し、不利です。

 ロボアドバイザーと投資信託の違いについて、今回説明しましたが、筆者は、投資初心者や自分で運用したくない人には、ロボアドバイザーが向いていて、ベテラン投資家や銘柄を選んで自分で運用したい人には、投資信託や株式等が向いていると考えています。

 ただ自分で運用するというのは、なかなか大変です。資産形成のために運用するには、まず自分自身が「どれくらいリスクを取れるのか、どれくらいのリターンを求めているのか」を把握することから始まり、それにより、どのような投資商品に、どれくらいの期間、どのように投資するのかが決まってくるのですが、そういった本来あるべきプロセス抜きで投資をしている人が少なくないと思います。

 あるべきプロセス抜きの投資は、往々にして、短期売買でリターンを狙う投機になりがちです。前回も書きましたが、投機で資産形成をするのは危険な行為で、お金持ち以外はやるべきではありません。

 自分自身で正しいプロセスで計画的に投資をできる人、短期売買の投機に走らないように自分を律することができる人は、自分で投資信託や株式等へ投資し運用すればいいですが、それができない人やその自信がない人は、ロボアドバイザーを使うほうが安全だと思います。

 次回は、ロボアドバイザーの運用の評価方法について、書きたいと思います。