“通貨安戦争”再来?世界的な通貨安戦争は金相場の長期上昇要因に

 米国は今月末にも利下げ実施という状況ですが、実は利下げを実施している国が増えてきています。

 5月あるいは6月、オーストラリア、ニュージーランド、インド、マレーシア、フィリピンなどが利下げに踏み切りました。これを、「利下げドミノ」と称するメディアもあります。

 利下げ以外に金融緩和策の実施を維持している、日本やEU(欧州連合)を含め、足元、主要国には金融緩和のムードが強まっています。FRBの利下げ実施ムードが強まったこと、米中貿易戦争のさらなる激化による実体経済への影響を軽減することが主な目的と見られ、さながら、金価格が歴史的高値を迎えるまでの2009年から2011年の間に目立った “通貨安戦争”の再来のようです。

 自国の通貨を金融緩和などで他の通貨よりも安く誘導することで、輸出時に有利になり、貿易黒字の伸長が期待できるため、景気回復策の1つとして米国、EUなどが同時に実施しました。

 再度、世界的な通貨安戦争が始まれば、主要国の通貨の価値が下がる、市場がカネ余り状態になるなど、金市場は代替通貨として注目が集まりやすくなり、価格の上昇傾向が鮮明になれば余剰資金を背景に投機筋が流入し、上昇幅が拡大する展開も考えられます。

 折しも、現在は中東情勢の悪化という有事の金買いが連想されやすい中にあります。今後、長期的な視点で言えば、有事に加え、その有事が拡大して株が下がり、その下落を補うべく世界的な金融緩和ムードに拍車がかかれば、有事の金買い・株の代替資産、ドルの代替通貨として、金は複数の上昇要因を併せ持つ展開となり、その時、金価格はさらなる上値を目指す可能性があると、筆者は考えています。