<今日のキーワード>

 6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではハト派姿勢が明示され、7月10日公表の『FOMC議事要旨』では予防的利下げが必要であることが主張されました。FOMCの後には、米中首脳会談で追加関税のリスクが後退した他、6月の雇用統計が上振れましたが、同日の米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長証言では、現在も見解を変えていないと明言されました。

 

【ポイント1】6月のFOMCではハト派姿勢を明示

FOMC参加者のうち年内の利下げ支持が増加

 FRBは6月18日~19日に開催したFOMCで、政策金利(FFレート)を据え置く一方で、将来の金融政策の指針(フォーワードガイダンス)を従来の「辛抱強くなる」から、状況を注視して「適切に行動する」に変更しました。また、FOMC参加者全17名のうち、年内の利下げ予想が3月の0名から8名に増加しました。

 

【ポイント2】不確実性の高まりと景気下振れリスクに備え

米中貿易摩擦、世界景気など不確実性高まる

 10日に公表された『FOMC議事要旨』の主旨は、通商政策を巡る不透明感、世界的な景気の減速など景気見通しに対する下方リスクが増しているため、FRBは予防的利下げを検討しているというものです。特に、企業投資の減速など企業活動への懸念が指摘されました。

 また、物価にも言及し、軟調な物価が予想以上に長引くリスクを指摘しています。このまま物価が軟調に推移すればインフレ期待が低水準にとどまってしまうため、それを防ぐために利下げの実施と物価の上昇が必要であるということです。

 

【今後の展開】7月末のFOMCで予防的利下げへ

『FOMC議事要旨』の公表と同日に行われたパウエルFRB議長の議会証言が注目されました。米中首脳会談によって追加関税のリスクは大きく後退したことや、5日に発表された6月の雇用統計が市場予想を大きく上回り、雇用情勢が基調的に安定しているとみられたことから、利下げ不要との見方が浮上していたためです。

 しかし、パウエルFRB議長は「雇用統計後も見解を変えていない」と明言し、証言の内容も『FOMC議事要旨』とほぼ同じでした。FRBは、経済指標などによほどの上振れがない限り、予防的利下げとして7月と9月に各0.25%の利下げを行うとみられます。