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陸上では「自動運転車」の早期実用化を目指し、提携などが加速、開発競争が繰りひろげられています。同様に、国際物量の約9割を占める海上輸送でも、人工知能(『AI』)などを使って人の力に極力頼らずに航海する「自動運航船」の開発が加速し始めています。こうした流れを受けて、国土交通省は国内技術開発の支援に乗り出す一方、国内企業は技術補完のため海外との提携を進めています。
【ポイント1】自動運航には『AI』の活用が不可欠
「自動運航船」の関連市場は、『AI』などの革新が進めば2020年代半ばには8兆円まで拡大するとの見方もあります。これに対応すべく国際海事機関(IMO)で「自動運航船」の国際的な枠組み作りが進められています。「自動運航船」は、陸地から遠隔で操舵したり、『AI』が気象条件や海面の状態、漂流物を感知・分析し、最適な航路を自動で進んだりするため、操船ミスに起因する事故の減少や船員の深刻な人手不足緩和につながると期待されています。一方克服すべき技術面の課題は多く、技術の補完のため、国内企業の海外との提携の動きが加速し始めています。
【ポイント2】自動運航で海外との提携が拡大
三井物産は防衛・航空機器メーカーのシンガポール・テクノロジーズ・エンジニアリングや英認証機関のロイドレジスターと自動運航システムの実証実験を始めました。三井物産子会社のOMCシッピングが所有する大型の自動車運搬船に、カメラやセンサーなどを取り付け運航データを収集して『AI』に海上の状況などを把握させ、障害物を回避できるかなどの分析を行います。
日本郵船の子会社MTIは、船舶の自動化の技術開発で先行するフィンランドの企業団体One Seaにアジア初のメンバーとして2019年5月28日に参画しました。欧州主要メーカーをはじめとして世界の企業・団体が参画しています。欧州企業が豊富な蓄積を持つ深層学習(ディープラーニング)などの『AI』技術を取り込むなどの狙いがあります。
【今後の展開】官民一体の取り組みによる国際競争力の向上に期待
「自動運航船」の開発では、国土交通省が2025年に自動運航を実用化する目標を掲げ、2018年に国内の海運会社や造船会社の技術開発の支援に乗り出しています。「自動運航船」の開発で官民一体の取り組みにより日本が『AI』などに関する技術で先行し、海運業、造船業の国際競争力が高まることが期待されます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。