接待を受けたら処罰の対象となる!?
損失補てん禁止規定は証券会社が顧客に対して損失補てんを行うことを禁止するだけではなく、顧客が証券会社から損失補てんを受けることも禁止しています。つまり損失補てんを受けた側も処罰の対象になるのです。
その内容を簡単に説明します。
1:証券会社の禁止行為
証券会社が顧客に対し、次の行為を行うことを禁止しています。
(1)事前の損失保証の申し込み・約束
(2)事後の損失保証の申し込み・約束
(3)損失補てんの利益の提供を行うこと
つまり「事前、事後に損失補てんの申し込み、約束はしちゃダメですよ」「実際に損失補てんのために財産上の利益の提供しちゃダメですよ」ということです。
2:顧客の禁止行為
顧客が証券会社に対し、次の行為を行うことを禁止しています。
(1)事前の損失保証を要求しこれを約束させること
(2)事後の損失保証を要求しこれを約束させること
(3)これらの約束により実際に利益提供を受けること
つまり「事前、事後に損失補てんの約束させちゃダメですよ」「実際に損失補てんのために財産上の利益の提供を受けちゃダメですよ」ということです。
損失補てんを受ける顧客も処罰の対象とされている理由は、顧客によるこれらの行為が、証券会社の違法行為に加担してこれを助長するものであり、証券会社の中立性、公正性を損なわせる悪質性の高い行為であると考えられているからです。
ただし、証券会社と顧客で異なる点があります。
証券会社は顧客に対し、損失補てんの申し込みや提供(証券会社側の一方的な行為で足ります)をするだけで違法となるのに対して、顧客側は証券会社に対して損失補てんを要求するだけでは足りず、証券会社にこれを約束させることまで必要とされている点です。
また、刑事罰の法定刑は証券会社(懲役3年以下もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科刑)と比べ、顧客(懲役1年以下もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科刑)は軽いものになっています。
さらに顧客に損失補てんで受けた不正な利益を保持させないために、補てんを受けた財産上の利益は没収されることになっています。
3:財産上の利益とは
損失補てんのための財産上の利益は経済的な取引の対象となる利益であれば幅広く含まれます。
例えば現金、有価証券、不動産、本来有償であるべきサービスの無償提供、ホテルやスポーツ施設の無償利用、物品の割引販売や高値での買い入れなどです。お酒や食事の接待を受けることも、本来有償であるべきサービスの無償提供に該当します。
ですので顧客が証券会社から損失補てんの目的でお酒や食事の接待を受けることも違法な損失補てんにあたり、処罰を受けることになります。