経済イベント満載、6月どうなる?

 6月1日、中国は米国の制裁関税に対する報復措置を発動。600億ドル分の米国製品への追加関税を、最大25%に引き上げました。また中国は、レアアースの対米輸出規制を検討との報道もあります。

 今月28~29日に大阪G20(20カ国・地域)首脳会議が控えていることから、米中首脳会談への期待が円高のブレーキ役となるかもしれません。ただ、その一方で6月18日には、トランプ大統領が来年の大統領選挙への出馬を表明するため、貿易問題に対するトランプ大統領の強硬姿勢は変わらないことが予想されます。従って円高圧力は継続されることが予想されそうです。

 また、ここ連日、FRB理事からのハト派発言が目立っており、パウエル議長も6月4日の講演で、「経済が貿易摩擦の影響を受けるのなら適切に行動する」と利下げを示唆する発言をしました。この発言を受けて、貿易摩擦による経済減速は利下げで対応できるとの安心感から、米国株は500ドルを超える反発となりました。市場の見方も年2回や3回の利下げ期待が浮上してきています。6月18~19日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、利下げはないにしてもハト派色が強まることが予想され、FOMCが近づくにつれてドル売りが強まる可能性があります。

 欧州経済や豪ドル経済の弱さは続くことが予想され、クロス円の一段の円高も予想され、6月もドル/円の上値を抑える要因となりそうです。

 日本の実需筋の動きにも注目する必要があります。2020年3月期業績見通しの主要企業の想定為替レートは1ドル=110円が多く、また、直近3月公表の日銀短観では、大企業・製造業の想定為替レートは108.87円と110円よりも円高の水準となっています。このため、109円前後からは輸出企業の売り圧力が強まることが予想されます。

 105円が視野に入ってきたとの見方が出てきますが、一直線で105円に円高に行くとは思えません。その前にはいくつかの重要なテクニカルポイントがあり、それらを確実にブレイクしていく必要があります。まずは年初来高値112.40円と年初来安値(※1)104.10円の半値である108.25円以下で相場が続くかどうかがポイントになりそうです。108.25円以下の相場が続けば、次は2019年1月4日の安値107.52円がターゲットとなりそうです(107.52円は1月3日のフラッシュクラッシュの翌日の安値)。

※1:高値、安値は各種相場情報から筆者が判断した水準。

 5月に大きく動いたドル/円相場は単月で終わるとは思えません。一方で、5月の利食いや反動で 相場が戻す場面も見られるかもしれませんが、5月に円高をもたらした相場環境が大きく変わらない限り、相場の方向は依然、円高を向いているようです。

6月の主要日程

6月1日 中国の米輸入品関税(600億ドル相当)の引き上げ
6月10日 米国、対メキシコ制裁関税第1弾(5%)実施見通し
6月中旬 英国メイ首相の辞任を受けて与党・保守党の党首選始まる
6月17日 対中追加関税(3,000億ドル相当)についてUSTR(※2)が公聴会
6月18日 トランプ大統領再選出馬表明
6月18~19日 FOMC
6月28~29日 大阪G20

※2:USTR= United States Trade Representative。米国通商代表部。米国の通商交渉・貿易摩擦等の貿易に関する問題について、大統領を補佐する機関。