国内外の供給過剰で動力炭価格に下押し圧力、電力各社にプラス

 中国では年初から、輸入石炭価格が国産品を下回る水準で推移しているが、BOCIはこうした状況が年内続くかという投資家の疑問に答えるため、国内外の市場動向を改めて調査・分析した。その結果、アジアの動力炭需給が向こう1年で緩むと予想。国内の石炭価格の軟化もあり、火力発電セクターの業績回復が期待できると報告した。電力セクター全体に対して強気見通しを継続し、引き続き華潤電力控股(00836)と華能国際電力(00902)をトップピックとしている。この両社の現在株価はフォワードPBR(株価純資産倍率)約0.7倍の水準にあり、予想配当利回りは6%弱に上る。

 BOCIによると、アジアでは石炭需要が伸び悩む中、供給量が上向く可能性が高い。主要輸入国の動力炭輸入量がここ数年、月5,000万トン前後で横ばいに推移する中、オーストラリアなどの一部輸出国が向こう数年にわたり、生産力増強に動く可能性がある。また、中国は石炭輸入量を18年実績並みに抑える意向。こうした状況下で、アジア地域の動力炭需給は緩み、価格が下落する公算が大きい。

 アジア最大の石炭輸入国の一つである日本は、18年に原発5基(総容量5.6GW)を再稼働させており、20~21年にはさらに4基(同3.6GW)が続く可能性がある。一部の再稼働により、必然的にその他の電源需要が縮小し、日本のLNG(液化天然ガス)スポット価格は16年5月以来の低水準まで下落。これに伴い、豪ニューカッスル港の石炭価格も下落した。特に日本の電力会社による19年度の石炭供給契約が完了した後に、こうした傾向が鮮明となった。

 電力セクターのトップピック銘柄は華潤電力控股と華能国際電力だが、両社の発電施設に占める東部沿海地域の割合は18年に39%、33%と、電力銘柄の中で最も高水準。アジアの石炭価格の下押し圧力が続いた場合、燃料調達面で両社のメリットが最も大きい。

 一方、中国では、国内最大の石炭積み出し港・秦皇島の動力炭スポット価格が5月に大きく下げた。沿海地域の電力グループ6社の手元在庫が冬場のピークシーズン並みを維持する中、夏場に向けた在庫確保の動きが鈍かった影響が出た。電力6社の5月の1日当たり石炭使用量も前年同月比18.3%減の計58万7,000トンにとどまり、需要そのものの後退も顕著。また、国内各港における石炭在庫も高水準にあり、一部では対策に向けた会議を招集するなどの動きも見られた。スポット価格の先行指標となる石炭先物価格は1トン当たり581.6元まで下げ、現スポット価格を3%下回る水準にある。

 メディア報道によれば、国家発展改革委員会は石炭業界に対し、電力各社との長期契約価格を引き下げるよう要請したという。BOCIによれば、これは電力価格値下げに向けた布石。ただ、動力炭スポット価格は電力価格より速いペースで下げる可能性が高く、火力発電各社にとっては結果的に有利となる可能性が高い。