IMF試算による世界経済の影響

 5月23日、IMF(国際通貨基金)は米中の貿易戦争が激化すれば、世界の経済成長率が0.3%下振れすると試算しました。4月に世界の成長率見通しを3.3%に下方修正したばかりですが(1月時点見通し3.5%)、わずか1カ月強で再びの下方修正です。

 4月時点でIMFのラガルド専務理事は「2019年後半から世界経済が再び上向く」と説明していましたが、23日の報告書では「(米中貿易戦争の激化は)世界経済の回復シナリオを危機にさらしかねない」と警鐘を鳴らしています。輸入関税の引き上げで個人消費が下振れするだけではなく、企業や投資家の心理が冷え込み、設備投資や株式投資も落ち込むと分析しています。

 5月に入って株式市場の勢いがなくなってきました。また、米経済指標にも弱い数字が出始めています。IMFの警鐘通り、経済の弱さが目立ってくると米金利は低下し、金利は低下しても株式は上昇しないかもしれません。ドルは売られ、円高に動く可能性が高まります。

 今週は、5月30日に米国1-3月期GDP(国内総生産)改定値が発表され、速報値の+3.2%が下方修正されるのかどうかに注目です。

 また、5月31日には中国の5月製造業PMI(購買担当者景気指数)が発表されます。4月は「50.1」と拡大、縮小の分かれ目となる「50」をかろうじて上回っていますが、3月の「50.5」よりは低下しています。5月に入ってからの米中貿易摩擦が激化したため、その影響から5月のPMIが「50」を下回ることになるのかどうかに注目です。下回れば、市場はかなりの影響を受ける可能性があり、警戒が必要です。