新聞に「国が自助努力の方針示す」と掲載され、ネットやSNSで話題沸騰中!

 2019年5月23日に掲載された、朝日新聞の記事(※1)などネットで話題となっています。元の話題は、金融庁の市場ワーキンググループの報告書案(※2)です。「高齢社会における資産形成・管理」報告書案が第23回会合で示され、次回で確定されると思われます。

 ネットを眺めていると「自助努力というなら年金保険料を取るな」といったような批判の声が目につきます。しかしこの報告書をきちんと読めば「全部自分で備えよ」と突き放しているのではなく「足りない部分、一部については自分で備えよ」というメッセージになっています。

 むしろ「自助努力」による老後資産形成の取り組みは現役時代にしか行えないことを思うと、公的な立場からはこうしたメッセージを早期に出すべきで、むしろ発信する勇気を評価するべきだと思います。

※1出所:人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案
※2出所:金融庁金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第23回)

読んでみると大変まっとうなことが書かれていた。つまり「全部」ではなく「一部」を備えるということ

 報告書案を読み込んだ人は少数派と思いますが、本サイトを読まれている皆さんはぜひ、報告書案と資料を斜め読みしてみてください。今、老後資産形成に起きている課題がほとんどそこに示されていると思います。

 公的年金は、日常生活費をまかなう程度には足りるものの、生きがいやゆとりを充足するには十分ではありません。そもそも、生きがいやゆとりのための費用は人それぞれですから公的年金が一律にカバーすべきものではありません。

 これは「全部自分で備えろ」というのではなく「一部を自分で備えよ」というメッセージであり、そのために現役時代からアクションを起こしなさいというストーリーの提示です。

 自分が老後に至ってから「やっぱり足りなかった」と落胆してももう備える余裕はありません。年金生活に入る「前」をいかに有効活用できるかがカギです。

 そしてiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)とつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)および一般NISAといった税制優遇の取り組みの「器」として用意されているため、その利用を促しているのです。

 公的年金は破たんするわけではありませんし、月22万円程度(現状のモデル夫婦の給付水準)を24年(現状の女性の65歳の平均余命)もらい続ければ6,336万円にもなります。マクロ経済スライドによる給付水準低下を勘案しても5,000万円以上の価値はあるでしょう。

 これをもらいつつ「自助努力」により楽しい老後の資金確保を各自目指そうと指摘し、また金融機関サイドには適切な商品提供や販売体制を求めているのがこの報告書なのです。