――投資初心者が投資になれるためには、何から始めればいいですか。

渋澤 コモンズ投信では、投資は体感することだと考えています。体感するイベントやセミナーは随時開催していますが、中でも毎年、夏に親子で体感するイベントは好評です。当社の直販口座の6人に1人は子ども(未成年口座の「こどもトラスト」)なので、参加する子どもは間接的に株主。そこで子ども会議を開いて、この会社を応援すべきかしないかを議論して、応援することに決まったら、社長宛にはがきを書いてもらいます。物言う株主ですね。はがきを社長に届けると、株主総会では見せない素顔を見せてくれますよ。

投資は体感すること

 2018年の9周年イベントでは資生堂社長の魚住雅彦さんにはがきを渡したところ、とても喜んでいただきました。もちろん資生堂の改革の話も聞きました。資生堂は良い会社ですが、魚住さんが外部から招かれて社長に就任した2014年当時は、140年の長い歴史のある会社だけに組織がきっちりできあがっていたそうです。

 それでは組織が硬直化してしまうので、魚住さんは各部署を回って直すべきところは直していった。厳しい指摘をするわけではありません。

 例えば従業員と話していて感動すると名刺大の「ワクワクカード」を渡すのです。従業員はめちゃくちゃ喜ぶ。そういう太陽のような人が来たから、資生堂は持っていたポテンシャルを十分に発揮できるようになったのでしょう。投資したお金が増えた減ったということも大事ですが、そこにとどまらず企業を体感することが大切です。

――それでも目に見えない投資よりも目に見える現金の方が安心と言う人もいます。

渋澤 歴史を勉強すると分かりますよ。終戦直後の1946年2月に何が起こったかというと、インフレ対策として新円切替が実施されました。タンス預金の紙幣がただの紙切れになったのです。そういう前例があるのに、現金を信じるのですか?

 日本人は目に見えないものをリスクと思わない傾向があります。本当は逆で、見えないものがリスクで、すでに起こってしまって目に見えるものはリスクではありません。例えば津波は不幸な出来事ですが、起こってしまったらリスクではなくなります。津波が起こるかもしれないという状態がリスクだから、津波に備えて堤防を高くしたり、避難経路を決めたりする。これがリスクマネジメントです。目に見えないものをリスクと思わないのは、イマジネーションが足りないせいかもしれません。

――イマジネーションを働かせれば超高齢社会も怖くない!?

渋澤 30年後は超高齢社会が到来しますが、日本が世界から求められるものはたくさんあります。急激に増えているインバウンドは、最高の輸出産業であるとは思えませんか? わざわざ輸出しなくても、お客さん(外国人)の方から来てくれて、商品やサービスを消費したり、持って帰ったりしてくれる。超高齢社会であっても、企業には成長の余地があることが分かりますよね。

ところで人とAI(人工知能)の違いって、分かりますか?

――考える速さの違いとか……。

ブラックホールの画像にワクワクするのもイマジネーション

渋澤 イマジネーションがあるかないかです。AIは全てのデータを読み込んで早い処理スピードで答えを出します。でも過去のデータの積み重ねなので、すぐ先の見られる未来のことしか予測できない。人間は過去のデータにとらわれずに「これだよね」と予測できる。だから外れることも多いのだけれど、当たれば現時点から一気に未来へ飛躍できる。
 この能力は知能が高いといわれるチンパンジーでも持っていないそうです。チンパンジーは体験したことから未来を予測して行動することはできるけれど、見たことのない世界を考えることはない。人類は飛躍したことを考えて実現してきたからこそ、文明を築くことができたのでしょうね。

――投資もイマジネーションで構いませんか。

渋澤 「コモンズ30ファンド」を勧めたいけれど(笑)、アクティブファンドをドタ勘(土壇場の勘)で選べばいいですよ。現物株投資も楽しいけれど、分散投資をするためには何十銘柄も買わなければならずコストがかかります。その点、投資信託は十分な分散投資ができているのにコストが低いですね。

 私がこれを言うと批判されますが、インデックスファンドはインデックスに採用されている銘柄をほとんど全部買います。超高齢社会が来るのに、対応できる企業できない企業をひっくるめて全部買うのは賢くないと思います。
 
――「コモンズ30ファンド」は楽天証券でも購入できるので、まずは少額で買ってみると投資が体感できそうですね。ありがとうございました。

渋沢栄一に関する多くの書籍の前に立つ渋澤健さん

※4 ハーバード大学の知日派教授のエズラ・ヴォーゲルによる著書。戦後の日本経済の高度経済成長の要因を分析して日本的経営を評価した内容で、1979年に出版されて世界的なベストセラーとなった。

新1万円・渋沢栄一は今の日本をどう見る?インタビュー(前編)を見る>>

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