5月13日~17日 原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は上昇。中東の地政学的リスクの高まりを受け、買いが優勢となった。ただし、米国の原油在庫が予想に反して増加したこともあり、上値は抑えられている。
米国とイランの対立にサウジアラビアを巻き込み、中東の緊張が高まっている。米軍が中東地域に空母打撃群を派遣、イランへの牽制を強めるなか、12日にはサウジアラビアのタンカー2隻が破壊工作による攻撃を受けた。14日にはシーア派武装組織フーシがドローンでサウジアラビアの油送管を攻撃した。翌15日に米国務省はイラン隣国イラクの大使館および領事館の職員に出国を命じており、中東地域の緊張が高まっていることが窺える。米国と同盟関係にあるサウジアラビアを巻き込んだ米国とイランの対立は深まるばかりで、16日にはサウジアラビアの連合軍がフーシの武器庫などを攻撃した。昨年5月、トランプ米大統領が核合意からの離脱を表明し、その後制裁を再開してからというもの、両国の関係は悪化の一途を辿っており、さらに今月2日からのイラン産原油輸入禁止の適用除外撤廃後はその関係が著しく悪化している。石油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖など原油供給への懸念が強まっており、不安感から買いが優勢となった。
また、米株式市場が下げ一服から戻していることも支援材料。中国は13日、米国が追加関税を引き上げたことへの報復措置として、6月1日から米国からの輸入品の関税率を引き上げることを明らかにした。中国の強硬姿勢により貿易協議の合意実現に対して不透明感が増している。米中の報復合戦への懸念は根強くあるが、トランプ米大統領は14日、両国の話し合いは非常に良好であるとの見解を示しており、投資家心理の過度の冷え込みはやや和らいでいる。また、主要企業の決算内容が良好なこともあり、米経済の底堅さを好感する動きも。これらを手掛かりに米株式市場は反発、株高を好感した動きはリスク資産の一角とされる原油にも波及した。
ただし、上値の重さは否めない。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は減少予想に反して大幅な増加となった。原油在庫の水準は2017年9月以来の高さとなっている。このことが上値抑制要因となり、原油の上げ足を鈍らせた格好。しかし、次週5月27日のメモリアルデーから米国は本格的なドライブシーズンに突入するため、ガソリン需要の増加に対応してリファイナリーの稼働上昇、つまり原油需要の増加が見込まれる。米国のガソリン在庫は予想以上に減少、製油所のトラブルの報も聞かれており、切り返しているガソリン相場の上昇に拍車がかかる可能性がある。原油在庫に余剰感はあるものの、ガソリン相場に連れ高といった展開も念頭に入れておくべきだろう。