穏健金融政策を継続、米国からの圧力で「国有企業改革」加速へ
中国人民銀行(中央銀行)が過度の引き締めや過度の緩和を回避する形で穏健スタンスを維持する中、国内のインターバンク市場では8月11日-18日週も穏やかな流動性引き締めトレンドが続いた。市場では引き続き、同行が中立的な政策姿勢を維持するとの見方が強い。同週の指標を見ると、レポ金利は上向き、7日物は3.53%(前週3.07%)、翌日物は2.99%(同2.87%)。SHIBOR(上海銀行間貸出金利)は翌日物が2.84%(前週2.79%)、7日物が2.89%(同2.87%)だった。人民銀行はこの間、リバースレポ(7100億元)、MLF(3995億元)を通じ、国内銀行システムに計1兆1000億元を供給した。
米ドル安を背景とした年初からの元高を受け、中国の資本勘定は明らかに改善している。その背景にあるのは、中国経済の予想以上の堅調さや、政府当局が国内企業による対外投資(不動産やホテル、娯楽、映画、スポーツなど各分野)をターゲットに規制強化を実施したこと。BOCIは短期的に、元高を受けた資本勘定の改善が金融システムの流動性安定化に寄与するとみている。
投資マインドの安定や7月の経済指標が小幅に市場予想を下回ったことなどから、債券利回りは11-18日週にほぼ横ばい。5年物、10年物の政府債利回りは3.59%(前週3.58%)、3.60%(同3.62%)だった。債券利回りはここ数週間、ほぼ横ばいに推移しているが、これは中立的な金融政策が背景。BOCIは7月の経済指標の減速が短期的に債券相場を底上げするとみる半面、金融関連の規制強化が引き続き最大のリスクになると指摘している。
一方、為替市場では、米国の政治問題やスペインのテロ事件などが響き、引き続き投資家のリスクオフ姿勢が続いた。追加利上げをめぐる連邦公開市場委員会(FOMC)内での見解の相違なども響く形となり、ドルインデックスは軟調。欧州中央銀行(ECB)が7月の金融政策会合議事録でユーロ高への懸念を示したことで、ユーロ相場も下落した。こうした中、人民元の対米ドル相場は8月上旬に上昇したが、11-18日週には米中貿易摩擦懸念を受けてやや元安傾向に転じた。BOCIはこの先短期的に、元高トレンドが続くとの見方。ただ、中期的には中国の景気動向や米利上げサイクル、米ドル相場の変動などを理由に、元相場の先行き不透明感が強いとしている。
中国の政策に絡む今後の注目ポイントは、トランプ米大統領が鉄鋼製品のダンピング(不当廉売)や米知的財産権の侵害を理由に、中国の貿易慣行に関する調査を行うと決定したこと。BOCIは米国が貿易不均衡の是正要求を盾に、中国に北朝鮮問題への対応を迫る可能性を指摘。中国政府としては米国からの圧力の下、国有企業改革やサービス業の開放を加速させ、対外関係の改善や中期的な経済成長確保を図る可能性が高いと指摘している。