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 今年1月に就任したブラジルのボルソナロ大統領は、最優先政策として『年金改革』法案をあげています。ボルソナロ大統領は2月に下院議会に『年金改革』法案を提出しましたが、審議は難航しています。ブラジルの財政健全化は急務ですが、国民に痛みを強いる改革でもあります。同法案の成立には憲法改正が必要であり、議会運営上のハードルが高いため、審議の進展が注目されます。

 

【ポイント1】『年金改革』法案成立までには多くのステップが必要

最初のステップを踏み出す

 今年2月に提出されたボルソナロ政権の最優先政策である『年金改革』法案は、4月23日にようやく下院憲法司法委員会での票決を通過、合憲性が認められ法案成立に向けて最初のステップを踏み出しました。

 今後、下院特別委員会、下院本会議、上院の憲法司法委員会・特別委員会、上院本会議において、それぞれ審議・承認(上下院本会議では6割以上の賛成、投票は2回)を経て成立の運びとなるもようです。

 

【ポイント2】法案審議は難航、遅れが目立つ

政権の政治基盤の弱さが懸念材料

 ボルソナロ政権は、汚職撲滅や治安回復などを訴え国民の支持を得ました。しかし同大統領の基盤である与党・社会自由党(PSL)は、単独では下院の定数の約1割強を占めるにすぎません。そのため同政権にとって議会運営は難しく、法案審議にも遅れが目立っています。

 今後、特別委員会の審議での承認を得るために、『年金改革』法案の内容が改革としてはマイルドなものになる可能性もあり、注意が必要です。

 

【今後の展開】『年金改革』法案成立はブラジル経済に大きなプラス

 ブラジル経済省によれば、『年金改革』法案の成立による財政改善効果は今後10年間で、約1兆レアルを上回る金額が見込まれています。これは、ブラジルの2018年名目GDPの15%程度に相当し、『年金改革』が成功すれば、ブラジル経済にとって大きなプラスの効果が期待されます。

 これまでのところ、8月頃までに下院での採決、10月頃までに上院での採決が見込まれており、審議が順調に進めば今年秋頃に成立する可能性があります。今後の審議の進展が注目されます。