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『VIX指数』とは、S&P500種指数を対象とするオプション取引の変動率を元に、米シカゴ・オプション取引所が算出する指数です。市場参加者が今後1カ月で株価の変動をどのように予想しているかを示したもので、株価の下落局面や景気の先行き不透明感が高まる場合などに上昇する傾向があり、別名「恐怖指数」とも呼ばれます。足もとで株式市場が急落しましたが、『VIX指数』はどのように反応したのでしょうか?

 

【ポイント1】『VIX指数』は株価急落時や先行き不透明感が高まる時に上昇

過去には、リーマンショック後や、昨年の米金利上昇時などに急騰

『VIX指数』は株価の急落時や政治・経済的に先行きが不透明となった時などに大きく変動しやすく、過去には2008年9月のリーマンショック後の同年11月に80.86まで急騰したことがありました。また最近では、2018年2月に米長期金利が上昇したことや、同年秋以降に米中貿易摩擦への懸念が高まったことなどを背景として世界的に株価が大きく下落した際に、『VIX指数』は30台後半にまで上昇しました。

 しかし、2019年の年明け以降は、米中貿易協議の進展期待から、株式市場や『VIX指数』は落ち着いた動きとなっていました。

 

【ポイント2】足もとでも上昇しているが…

過去と比べて大きな変動ではない

 ところが、5月6日以降、『VIX指数』は上昇しています。背景には、5月5日にトランプ米大統領が中国からの輸入品2,000億ドル分への追加関税を10%から25%へと引き上げる、と表明したことがあります。これにより米中貿易協議の進展に不透明感が高まり、協議が決裂した場合などの世界経済への影響が懸念され、株価が急落しました。ただし、『VIX指数』は5月8日時点で19.40となっていますが、これまでの急騰局面と比べると大きな上昇ではありません。

 

【今後の展開】米中協議の行方が鍵を握る

 8日、米通商代表部(USTR)が前述の対中追加関税を10日から引き上げると正式に中国に通告しました。これに対し中国政府も対抗措置を取ると表明しており、米国への関税を引き上げる可能性があります。

 一方、米中は5月9日~10日の日程でワシントンにおいて閣僚級協議を開催しており、その動向が注目されます。『VIX指数』は過去と比べて大きな上昇ではない点からも、市場は協議決裂までは織り込んでいないと見られます。開催中の協議で交渉が完全にまとまるとは考えづらいものの、今後も交渉が継続されることで、制裁関税の引き上げは一旦回避される方向に向かうのではないかと見られます。