本日の注目通貨

ドル/円:一時110円割れ

 米労働省が先週発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が+26.3万人と市場予想を大きく上回りました。失業率は前月から更に2ポイントも下がって3.6%になり、1969年以来約50年ぶりの低水準へ。

 ただその背景には労働参加率が62.8%まで下がったことがあり、米国社会の高齢化で失業率が低下しているならば手放しで喜ぶというわけにはいきません。一方、平均賃金は前月比+0.2%、前年比+3.2%で予想を下回ったものの、堅調さを維持しました。

 金利市場は、FRB(米連邦準備制度理事会)が2020末までに1.5回の「利下げ」があると予想しています。しかし、今回の雇用統計の強さや、パウエルFRB議長が今月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で予防的利下げの可能性を否定していることを考えると、この予想は無理があるように思えます。

 4月雇用統計は、FRBの利下げ確率を低下させました。「ドル安」の大きな理由が消えたと思ったところに、トランプ大統領が対中関税引き上げを宣言したことで、またドルの方向が不透明になってきました。マーケットにはすでにドル買い/円売りのポジションが積み上がっていることにも注意したいと思います。

出所:MarketSpeed FXより、楽天証券作成

トルコリラ/円:年初来安値を更新、底入れ感まだなし

 トルコリラの急落は6日(月曜)の海外マーケットで起きました。それまで18円台後半で取引されていたトルコリラ/円は、一気に18円を割り8日には17.66円まで下げて、1月3日のフラッシュクラッシュの安値を更新することになりました。動きは緩やかになったものの、下落トレンドは続いています。

 下落の理由には、イスタンブール市長選のやり直しをすることが決まったこと。同市長選は野党が僅差で勝利したのですが、エルドアン大統領の与党AKPが強硬に異議を申し立てていました。与党が必ず勝つように不正工作をする可能性もあり、マーケットには独裁政治への嫌悪感が高まっています。与党AKPと連合を組む右派政党が、エルドアン大統領に再選挙か協力関係解消かを迫ったことが背景と言われています。いずれにしても政治的混乱によって、トルコの経済改革はさらに遅れることになるでしょう。

 トルコ中央銀行は、前回のリラ買い介入で外貨準備金を大幅に減らしてしまい、もはや通貨防衛に使う資金の余裕がないと言われています。

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