トランプ・クラッシュにマーケット混乱

 前代未聞の日本の10連休が終わりました。10連休中は、為替フラッシュ・クラッシュ(瞬間的に値が飛ぶ暴落)が警戒されましたが、これは起こらず、トランプ米大統領のツイッター発言の方が効きました。

 5月5日、トランプ大統領は対中国追加関税を10日(金)に10%から25%に引き上げると発言。これを受けて6日の米国株は一時400ドル超急落。ドル/円は110円台半ばに下落しました。10連休中に警戒していた為替フラッシュ・クラッシュではなく、「トランプ・クラッシュ」が起こりました。

 しかし、この発言は9日からの閣僚級米中貿易協議を前にしたトランプ流交渉戦術であり、米中協議は継続されるだろう、決裂はないだろうとの楽観的観測から米国株は引けにかけて戻し、下げ幅は66ドル安まで縮小しました。

 しかし、予断は許さない状況が続きそうです。というのは、5月3日時点ではトランプ大統領は「中国との協議は2~3週間以内に決まる可能性」と発言していて、この数日のうちに事態が急変し、交渉カードとして揺さぶりをかけているというよりも、重要事項で妥協しないという姿勢が伺えるからです。

 ライトハイザーUSTR(米国通商代表部)代表も「中国は合意内容を覆した」と批判。あの楽観的なムニューシン財務長官でさえも「協議は大きく後退した」と発言しています。この発言の元は、知的財産の保護や技術移転の強制禁止などの対立とみられています。

 今年に入ってから昨年までの悲観的な要因が好転し、株価上昇、米金利低下、ドル高と進んできました。好転した要因とは、米中貿易協議の進展、中国の景気対策による景気回復、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ観測ですが、5月に入ってこれらの要因にブレーキがかかってきた状況となっています。今後、こういった要因がマーケットでの注目材料となりそうです。