4つのリスク要因を分析
まず、FRBの利下げ観測については、5月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見でパウエルFRB議長は「弱いインフレは一時的」と発言。利下げ観測が後退し、株価は急落しました。果たしてインフレは「一時的」かどうか、今後、マーケットでは物価や賃金などのインフレ指標が一層注目され、相場のかく乱要因となりそうです。強いインフレ指標が発表されれば、利下げ期待は後退したままであり(ドル高要因)、弱いインフレ指標が続けば、利下げ観測が再び高まります(ドル安要因)。
そして、米中貿易協議は再び波乱材料となってきました。
中国が譲歩すれば10日の追加関税25%への引き上げは延期、または撤回されるかもしれませんが(手続き的に10日の実施は無理との見方も)、10日に関税率引き上げが実施されなくても交渉難航が予想されるため、ドル/円は上値の重たい展開が続きそうです。
さすがに米中双方の不利益となる交渉決裂は想定しがたいですが、交渉決裂や交渉難航は回復基調にある中国景気に水を差す形となり、世界経済にとっても大きな影響が及び、再び金融市場にはネガティブな状況が起こることが予想されます。
そのため、米中貿易協議と同時に、中国景気動向にも警戒しておく必要がありそうです。6月28~29日のG20(20カ国・地域)首脳会議開催までの米中合意は遠いかもしれません。
米中貿易協議以外に5月23~26日の欧州議会選挙、25~28日のトランプ大統領来日も注目材料です。
欧州議会選挙では、英国出身議員の位置付け、各国からの反EU(欧州連合)や極右勢力議員の台頭など6月に向けての波乱材料になる可能性があります。
さらにここへきて、イタリアもリセッション(景気後退)から脱出するなど欧州景気も上向き始め、インフレも伸びが加速してきています。欧州景気に持続力があれば、欧州政局波乱の抑制要因となるため景気物価動向に注目しておく必要があります。もし、景気回復が腰折れすれば、ポピュリズムが激しくなるかもしれません。
5月25~28日のトランプ大統領訪日時には、米中協議の進展次第では米国民にアピールするため日米協議に強硬姿勢を取る可能性があり、トランプ大統領の発言に注目する必要があります。国賓待遇で新天皇と面会することから訪日中は紳士的に振舞うと思われますが、離日後は発言に警戒しておいた方がよさそうです。