プラス・マイナス要因が混在、卸電力価格引き下げが行われるかどうかが焦点に

 BOCIは中国電力(IPP)セクターを取り巻く複数のプラス、マイナス要因を指摘し、セクター全体に対して中立見通しを継続している。まず政策面で注目されるのは、増値税(VAT)引き下げに伴い、電力卸売価格の同水準の値下げが行われるかどうか。一方、ファンダメンタルズ面では、動力炭価格がオフシーズンにもかかわらず堅調を維持していることが電力セクターにとってはネガティブ。燃料調達コストの削減幅は、電力各社の期待値より小幅にとどまる可能性が高いという。個別では、水力発電事業の回復期待と高配当利回りを理由に、中国電力国際(02380)をトップピック銘柄としてい

 電力セクターのポジティブ要因は主に3点あり、うち一つは中国政府が4月1日付で、製造業のVATを16%から13%へ引き下げたこと。仮に電力卸売価格が現行水準のまま維持されれば、電力セクターにとってはVAT抜き電力販売価格が実質的に上昇することになる。電力各社はもともと薄利であり、このプラス効果はかなり大きいという。ただ、地方当局はVAT減税後の卸電力価格について、まだ方針を明らかにしておらず、BOCIは今のところ慎重スタンスを維持。「当局がVAT減税分の卸電力価格引き下げを実施し、エンドユーザーに減税分を還元する」と想定している。

 中国当局は5月1日付で基本養老保険の企業側負担率を19-20%から16%へ引き下げる計画で、電力各社の人件費削減効果は予想利益に相当する。このほか、3つ目のポジティブ要因は19年の電力需要の堅調見通し。BOCIは前年比6.4%の伸びを見込む。

 一方、ネガティブ要因の一つは、予想以上の石炭価格の堅調。輸入制限や国内供給の混乱、需要堅調を受け、秦皇島港の動力炭スポット価格は1トン当たり600元前後の水準を維持している。BOCIの推定では、19年の単位当たり燃料調達コストの削減幅は約3%にとどまり、電力各社の予想値(5-8%)を下回る可能性が高い。

 18年下期以降、石炭火力発電ビジネスが沿海部から内陸部にシフトするというトレンドも一部企業にとってマイナス。東部沿海地区では節電志向が高まっている上に、江蘇省など経済的に豊かな省では、自前で発電するより他省からの電力調達を好む傾向も出ている。こうした環境は、東部沿海地区を主要事業地とする電力各社にとって逆風であり、華潤電力控股(00836)や華能国際電力(00902)の設備稼働状況に影響する可能性がある。実際、華潤電力控股は19年の稼働時間数が4,800時間に減ると予測(前年は5,000時間)。華能国際電力の発電量は19年1-3月に前年同期実績を割り込んだ。

 また、“市場価格”枠の電力販売量が増加していることもマイナスに作用する可能性がある。同枠の販売量は18年に前年比26.5%増加し、総電力需要に占める割合は30.2%。BOCIは19年にはこの割合がさらに上向くと予想しながらも、同枠に関してはVAT引き下げによる販売価格上昇という恩恵がほぼ期待できないとしている。