新規炭鉱の操業で供給増、19年に石炭価格下落見通し
BOCIは石炭輸送の大動脈である「大秦線(鉄道)」の総点検や石炭輸入制限、安全基準の強化といった要因が、短期的に石炭相場を下支えするとみている。ただ、中国政府が多数の新規炭鉱の操業開始を認めたことなどから、19年の石炭平均価格に関しては下落を予想。中国中煤能源(01898)、中国神華能源(01088)の投資判断をダウングレードしたのに伴い、石炭セクターに対する従来の強気見通しを中立的に引き下げた。
陝西省産高品位炭(5,500キロカロリー種)のスポット価格は旧正月以降の4週間で9%上昇し、一時1トン当たり634元に達したが、3月半ば以降は狭いレンジで上下に振れる展開となり、4月8日時点では624元だった。
大秦線は4月6日-30日に春の総点検を行う予定(大秦線は石炭産地・山西省大同と国内最大の石炭積み出し港・秦皇島港を結ぶ貨物専用鉄道)。これにより、秦皇島港の石炭在庫が縮小し、短期的に石炭価格の底上げに寄与する可能性が高い。
中国の石炭輸入は今年1月に前年同月比20%増となり、5年ぶりの高水準を記録したが、これは通関手続き上の一時要因によるもので、2月には16%減少した。BOCIは19年も石炭輸入制限が続くとみている。また、建国70周年を迎え、政府は鉱山事故防止に向けて安全基準を強化し、規定量を超えた石炭生産を厳しく禁止する見込み。こうした要因はいずれも国内の石炭価格動向にプラスとなる。
ただ、19年には石炭生産量の拡大がプラス要因を打ち消す見込み。当局が3月までに年産1億4,360万トン規模の新規炭鉱の操業を認可したためで、年間換算した場合、全体の生産能力が4%増えることを意味する。国内では18年末現在、炭鉱1,010カ所(総年産能力10億3,000万トン)が建設中で、うち試験運転段階にあるのは203カ所(年産能力3億7,000万トン)。政府当局にはさらなる石炭生産力の引き上げ余地がある。
秦皇島の石炭在庫(4月8日時点で642万トン)と主要発電所の石炭在庫(3月20日時点で17日分相当)はいずれも、前年同期とほぼ同水準。こうした点から、BOCIは大秦線の総点検効果にもかかわらず、短期的な石炭価格の大幅高には期待しにくいとの見方だ。また、陝西省高品位炭の年初来平均価格が1トン当たり604元(18年通年では648元)にとどまったとし、19年通年の予想平均価格を600元に据え置いている。
うち1-3月を見ると、陝西省高品位炭の平均価格は601元と、前年同期の704元を大きく下回る水準。主要銘柄の1-3月期決算は大幅減益となる可能性が高い。
BOCIは18年本決算の発表後、中国中煤能源、中国神華能源の株価の先行きに対する見方を強気から中立に下方修正。エン州煤業(01171)には強気見通しを継続した。内モンゴル自治区での生産拡大が価格下落によるマイナス影響をカバーするとみられるためで、ほかに同社の現在株価の低バリュエーションも強気判断の一因としている。