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 日本経済は、昨年来の米中貿易摩擦の影響もあり、内閣府が先日発表した景気ウオッチャーで「このところ回復に弱さが見られる」と景気の基調判断をするなど、足もとでは足踏み状態となっています。こうした中、気になる私達の『賃金』はどうなっているのでしょうか? 経済データや今年の春闘の集計状況を用いて、その動向を見ていきましょう。

 

【ポイント1】サンプルが入れ替えられた毎月勤労統計はマイナスに転じたが・・・

統計に継続性のある参考値では緩やかな増加が続いている

 4月5日に最新の毎月勤労統計(2月分速報)が発表されました。現金給与総額は、1月の確報値が前年同月比▲0.6%と速報値の同+1.2%から大幅に下方修正され、2月の速報値は同▲0.8%と2カ月連続のマイナスとなりました。2018年は前年比+1.4%とそれ以前よりも大幅な『賃金』の伸びとなっていたのと比べ、2019年に入りマイナスに転じた形となっています。ただし、これは2019年1月からサンプルが入れ替えられた影響が大きいと見られます。

 現金給与総額を統計に継続性のある参考値(共通事業所ベース)で見ると、1月は前年同月比+0.6%、2月は同+0.5%となっており、緩やかな増加傾向が続いていると見ることが出来そうです。

 

【ポイント2】今年の春闘では政府からの具体的なベア目標は無かったが・・・

昨年同期を上回る賃上げ状況、働き方改革にも前向き

 次に、今年の『賃金』動向を春闘で見てみます。4月5日に発表された日本労働組合総連合会(連合)の第3回回答集計では、平均賃金方式で回答を引き出した2,276組合の平均は前年比+2.15%の同+6,412円となりました。昨年同期を0.02%ポイント、150円上回っています。また、中小組合(300人未満)の平均は同+2.07%の同+5,232円と、こちらも昨年同期を上回っています。

 このほか、長時間労働の是正や同一労働同一賃金といった、いわゆる働き方改革の取り組みの多くの項目で前向きな回答が引き出された模様です。

 

【今後の展開】雇用の堅調さが維持され、『賃金』の緩やかな上昇が続く見込み

 2019年2月の有効求人倍率は1.63倍と1974年1月以来の高水準になるなど、幅広い分野で人手不足となっています。足元の日本経済は一時的に足踏み状態となっていますが、海外景気は持ち直しつつあり、年後半には回復していくと見られます。人手不足を背景とした雇用の底堅さも続くことで、『賃金』は緩やかな上昇が続くと見込まれます。