為替DI:「円高見通し」半数超える。米中貿易交渉は9割が悲観
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル円、ユーロ円、豪ドル円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円の先安」見通し、マイナスの時は「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。[図-1]
「4月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」という質問に対して、3月末の水準(110.80円)よりも「円高になる」と答えた投資家は全体の約54%で、もっとも大きな割合を占めました。一方「円安になる」は19.5%にほぼ半減。残りの約26.5%は「動かない(わからない)」という回答でした。 [図-2]
円安見通しから円高見通しを引いたDIは▲34.35で、2ヵ月ぶりにマイナス(=円高見通し)に転換しました。
アンケートによると、8割以上の投資家の方が、米中貿易協議の行方に注目しています。ところが興味深いことに、9割以上の方が、米中貿易協議は「合意できない」あるいは「合意できても対立構造は続く」と考えています。今回のDIが大きくマイナスに傾いたのは、貿易協議の行方に悲観的な意見が反映された結果ともいえます。
3月のドル/円は、今月とほぼ同水準の111.38円でスタートしました。月の初めは一連の好調な米指標に後押しされて、3月5日に年初来高値となる1112.14円まで上昇。ところが、先月開催されたFOMCでメンバーの多数が年内利上げ「中止」を予想、米経済の減速懸念が急速に強まったところに、月後半から米指標が悪化したことが追い打ちとなって、25日にはドル/円が109.70円まで下落。その後は110円台で小動きになり110.82円で引けました。3月のドル/円は、米国経済に対する楽観で上昇して悲観と共に下落しました。
米中貿易協議を巡って「進展が見られた」とか、「行き詰まった」というニュースが出るたびにマーケットは一喜一憂していますが、協議が継続していること自体が良いニュースといえます。
大統領選挙が来年2020年に迫っているトランプ大統領は、早く「ケリ」をつけて選挙戦に集中したいので、交渉姿勢を大幅に軟化させるだろうと言われています。選挙のない中国は慌てる必要がないので、時間を引き延ばすほど有利だと考えているでしょう。ただ、トランプ大統領は米朝会談で「ちゃぶ台返し」をやってのけた実績があるので、そこは中国も慎重なようです。
ということで、お互いの出方を見ながらの米中貿易協議はもうしばらく続きそうです。一説には6月のG20大阪サミットにタイミングを合わせて決着、両首脳による成功を大々的にアピールする演出ではないかといわれています。
トランプ大統領が一時「対中追加関税の完全撤廃」まで持ち出したことで、合意内容に対するハードルがかなり高くなっています。中途半端な内容ならば、マーケットでは「セル・ザ・ファクト」に動き、ドル/円の下落リスクが高まることも考えられます。