今月の質問「米中貿易交渉」

楽天証券経済研究所 チーフグローバルストラテジスト 香川 睦

 今月の質問1:米中貿易交渉の行方を注目していますか?

 世界の市場が米中貿易摩擦の行方に注目しています。なぜなら、米中の貿易対立が激化すれば、中国はもちろん米国や日本の景気減速に下押し圧力となりかねず、株式の弱気要因に繋がる可能性があるからです。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究

 

今月の質問2:米中貿易交渉で最も注目しているポイントはどこですか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

今月の質問3:米中貿易交渉の結果をどう予想していますか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究

「今月の質問1:米中貿易交渉の行方を注目していますか?」との問いに対しては、約86%もの方々が「注目している」と回答されました。ただ、その注目ポイントや交渉結果の予想は分かれています。そこで今回は、「米中貿易交渉のシナリオ」別に筆者なりの相場見通しを一覧にしてみたいと思います。

 米トランプ政権は、中国製品に対する追加関税(2000億ドル分の中国製品に対する関税引上げ(10%→25%)を当初期限(3月1日)に発動せず、通商協議の進展を優先させています。英紙ファイナンシャル・タイムズは4月2日、関係者への取材で「米中当局者、貿易合意に向けた問題の大半を解消」と報道しました。

 GDP(国内総生産)で世界1位と2位である米国と中国が対立の激化を回避できれば、サプラインチェーンを巡る懸念や設備投資需要の減退観測が後退。日本市場の外需や業績見通しにもプラスとなりそうです。

 ただ、中国に対する批判はホワイトハウス内に留まらず米議会内で根強く、貿易面で合意しても、安全保障面で米国が対中強硬姿勢を維持する可能性はあります。一方、中国の習近平政権も国内事情に配慮して譲歩できず、米中協議そのものが決裂あるいは合意が後ズレしていくリスクも否定できません。

 現在、中国側は劉鶴副首相が、米国側はライトハイザーUSTR(通商代表部)代表やムニューシン財務長官らが閣僚級協議を続けています。市場は、米中首脳会談を経て、「何らかの政治的な合意や妥協」に至る可能性を期待しています。

 いまだ予断を許しませんが、貿易交渉の行方を巡るシナリオ別に相場見通しを下記一覧にしました。可能性としては、メインシナリオ、リスクシナリオ、ベストシナリオの順番で生起確率が高いと考えています。

米中の貿易交渉シナリオと相場見通し(参考情報)

出所:各種情報や報道より楽天証券経済研究所作成