昭和から「平成」へ。改元時のマーケットは?

 ところで、前回の改元時のマーケットはどうだったのでしょうか。

「昭和」から「平成」の改元は、1989年1月8日でした。その年の年末に日経平均株価は史上最高値をつける上昇となり、「平成」は正にバブルの真っ只中で始まりました。

 新時代幕開けの期待と祝賀ムードで上昇したというよりも、バブルという時代の流れの中で株価は上昇しました。むしろ、祝賀ムードはなく、昭和天皇が崩御されたことから、イベントやパーティー、会社の飲み会まで自粛ムードが漂っていました。このとき「歌舞楽曲」の自粛という言葉がよく使われていた記憶があります。この自粛ムードは昭和天皇の容態が悪化し始めた時から続いていたため、かなりの長期間自粛ムードが続きました。

 そして、ドル/円はどんな状況だったのでしょうか。

 当時、1ドル=120円台から140円台へと円安に進んでいました。この円安は株価の上昇と、1985年のプラザ合意による円高進行の反動によって円安となりましたが、これも時代の大きな流れを背景とした動きであり、祝賀ムードとは関係ないようです。
ただ、その中でも特に記憶に残っているドル/円の動きは、昭和天皇の「容態悪化」というニュースが流れるたびに、円安へ反応したことです。「容態が落ち着いた」と流れると、円安は戻りました。

 

「平成」から「令和」へ改元時のマーケットは?

 今回は天皇の退位に伴う改元のため自粛ムードはありません。むしろ、既に関連商品やイベントなどで盛り上がっており、祝賀ムード一色となっています。号外があのような人だかりで奪い合いになったことは今までになく、国民の関心が非常に強いことを示しています。5月1日に新天皇が即位され、新元号が施行となれば、さらに祝賀ムードが盛り上がることが予想されます。

 しかし残念なのは、即位日の5月1日は10連休中のため、日本の株式市場には反映されないことです。海外の株式市場が祝賀を反映するとは思えません。そうなると、10連休明けの5月7日(火)に日本の株式市場で一気に祝賀ムードによる買いが爆発するかもしれません。

 そしてドル/円も、株価の動きから円安に動くかもしれません。ただし、海外市場で大きな時代の流れによる急変が、株やドル/円市場でそれまでに起こらないことが条件となります。株や為替の方向は、祝賀ムードという一時的要因よりも、世界の時代の流れという大きな要因によって決定付けられるからです。

 世界の時代の流れとは、(1)世界景気後退、(2)貿易摩擦、(3)欧米の金融政策が考えられます。

1:世界景気後退

 中国や米国の製造業景況感がここへきて低下から反転傾向を示し、株価が上昇していますが、持続性があるかどうかに注目です。一方で、悪化が際立っている欧州も改善の兆しが見えるかどうかに注目です。

2:貿易摩擦

 米中通商協議の進展期待が高まっていますが、合意されれば世界経済回復にプラスとなります。しかし、追加関税完全撤回は無理としても、一部撤回で合意されない限り金融株式市場にはプラス材料とならないかもしれません。結局、6月のG20(20カ国・地域)首脳会合まで合意先延ばしとなり、内容も中途半端な合意になるかもしれません。

3:欧米中央銀行の金融政策

 欧米ともハト派色を鮮明に出しているためマーケットにとってはプラス材料ですが、ハト派にならざるを得ないほど景気が悪いのかどうか見極める4月になりそうです。

 次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)は4月30日~5月1日となります。10連休中に開催されるため、要注意だと思っていたのですが、3月に前倒しでハト派色を鮮明に出したことから警戒感は少し下がりました。

 5月1日の新天皇即位日は静かにお祝いすることができればいいのですが、10連休中の心構えについては、政府、自治体の対応が、よりはっきりしてきた段階でまた触れたいと思います。