新元号は「令和」に決まる
4月1日、新しい元号名が決まりました。「令和」(れいわ、reiwa)です。645年の「大化」以来、248番目の元号です。
これまで日本の元号は中国の古典(漢籍)を典拠としてきましたが、「令和」は奈良時代の歌集「万葉集」から引用されました。出典が日本の古典(国書)となったのは初めてとのことです。そして、新天皇が即位される5月1日午前0時に元号が改められます。
「令和」の意味合いについて安倍晋三首相は、新元号名発表後の記者会見で「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められている」と説明しています。
日銀短観は6年3カ月ぶりの大幅悪化
新元号名の決定によって、次の時代への大きな期待が高まりますが、1日発表された日銀短観(全国企業短期経済観測調査※)では、代表的な指標となる「大企業・製造業」のDI(業況判断指数)が前回2018年12月調査から7ポイント下がって、プラス12となり、2四半期ぶりに悪化しました。
※日銀短観…日銀が景気動向を把握するため、全国の企業約1万社に対して3カ月に一度行うアンケート調査。今回は、2月25日~3月29日に実施
悪化幅は、9ポイント悪化となった2012年12月以来、6年3カ月ぶりの水準となりました。3カ月後の見通しでは、大企業・製造業が4ポイント悪化のプラス8と、悪化傾向が続く見込みとなっています。
今回の調査では現時点の景況感も先行きの景況感も、3カ月前よりも悪化していると判断する企業が増えている状況となっています。ただ、当日の株価は祝賀ムードに加え、週末に発表された中国の製造業PMI(購買担当者景気指数)がよかったことから上昇しました。
景気動向がよくないのは日本だけではありません。4月1日に発表された3月のユーロ圏製造業PMI改定値は、速報値よりも0.1ポイント下方修正されて47.5と、6年ぶりの低水準となりました。
特に低迷が際立ったのがドイツの製造業PMIです。改定値は速報値から0.6ポイント下方修正され44.1となり、Brexit(ブレグジット:英国のEU[欧州連合]離脱)や貿易摩擦の影響を受けて新規受注が金融危機以降、最も急激なペースで低下しました。
昭和から「平成」へ。改元時のマーケットは?
ところで、前回の改元時のマーケットはどうだったのでしょうか。
「昭和」から「平成」の改元は、1989年1月8日でした。その年の年末に日経平均株価は史上最高値をつける上昇となり、「平成」は正にバブルの真っ只中で始まりました。
新時代幕開けの期待と祝賀ムードで上昇したというよりも、バブルという時代の流れの中で株価は上昇しました。むしろ、祝賀ムードはなく、昭和天皇が崩御されたことから、イベントやパーティー、会社の飲み会まで自粛ムードが漂っていました。このとき「歌舞楽曲」の自粛という言葉がよく使われていた記憶があります。この自粛ムードは昭和天皇の容態が悪化し始めた時から続いていたため、かなりの長期間自粛ムードが続きました。
そして、ドル/円はどんな状況だったのでしょうか。
当時、1ドル=120円台から140円台へと円安に進んでいました。この円安は株価の上昇と、1985年のプラザ合意による円高進行の反動によって円安となりましたが、これも時代の大きな流れを背景とした動きであり、祝賀ムードとは関係ないようです。
ただ、その中でも特に記憶に残っているドル/円の動きは、昭和天皇の「容態悪化」というニュースが流れるたびに、円安へ反応したことです。「容態が落ち着いた」と流れると、円安は戻りました。
「平成」から「令和」へ改元時のマーケットは?
今回は天皇の退位に伴う改元のため自粛ムードはありません。むしろ、既に関連商品やイベントなどで盛り上がっており、祝賀ムード一色となっています。号外があのような人だかりで奪い合いになったことは今までになく、国民の関心が非常に強いことを示しています。5月1日に新天皇が即位され、新元号が施行となれば、さらに祝賀ムードが盛り上がることが予想されます。
しかし残念なのは、即位日の5月1日は10連休中のため、日本の株式市場には反映されないことです。海外の株式市場が祝賀を反映するとは思えません。そうなると、10連休明けの5月7日(火)に日本の株式市場で一気に祝賀ムードによる買いが爆発するかもしれません。
そしてドル/円も、株価の動きから円安に動くかもしれません。ただし、海外市場で大きな時代の流れによる急変が、株やドル/円市場でそれまでに起こらないことが条件となります。株や為替の方向は、祝賀ムードという一時的要因よりも、世界の時代の流れという大きな要因によって決定付けられるからです。
世界の時代の流れとは、(1)世界景気後退、(2)貿易摩擦、(3)欧米の金融政策が考えられます。
1:世界景気後退
中国や米国の製造業景況感がここへきて低下から反転傾向を示し、株価が上昇していますが、持続性があるかどうかに注目です。一方で、悪化が際立っている欧州も改善の兆しが見えるかどうかに注目です。
2:貿易摩擦
米中通商協議の進展期待が高まっていますが、合意されれば世界経済回復にプラスとなります。しかし、追加関税完全撤回は無理としても、一部撤回で合意されない限り金融株式市場にはプラス材料とならないかもしれません。結局、6月のG20(20カ国・地域)首脳会合まで合意先延ばしとなり、内容も中途半端な合意になるかもしれません。
3:欧米中央銀行の金融政策
欧米ともハト派色を鮮明に出しているためマーケットにとってはプラス材料ですが、ハト派にならざるを得ないほど景気が悪いのかどうか見極める4月になりそうです。
次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)は4月30日~5月1日となります。10連休中に開催されるため、要注意だと思っていたのですが、3月に前倒しでハト派色を鮮明に出したことから警戒感は少し下がりました。
5月1日の新天皇即位日は静かにお祝いすることができればいいのですが、10連休中の心構えについては、政府、自治体の対応が、よりはっきりしてきた段階でまた触れたいと思います。
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