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 3月下旬に米国債市場で、長期金利の指標となる10年国債利回りが3カ月物の財務省証券利回りを下回る、長短金利の逆転現象『逆イールド』が起きました。『逆イールド』は、90年以降で過去3回あった景気後退局面でいずれも発生しており、景気後退の予兆とされます。足元の米経済指標は、後退局面入りを示唆するものはほとんど見当たりませんが、果たして、将来の景気後退の予兆なのでしょうか?

 

【ポイント1】米国債の長短金利が逆転

株式市場は『逆イールド』を嫌気

 債券の満期までの残存期間と債券の利回りの関係を表したものを利回り曲線(イールドカーブ)といいます。通常は長期金利が短期金利を上回ることが多く、イールドカーブは右上がりの曲線となりますが、米国債市場では3月22日、10年国債利回りが3カ月物の財務省証券利回りを下回る『逆イールド』が起きました。

『逆イールド』は一般に、先行きの景気後退を示唆する現象とされることから、市場ではリスク回避的な動きが強まり、22日のダウ工業株30種平均は前日比約460ドル下落しました。

 

【ポイント2】『逆イールド』は景気後退を示唆

過去は1~2年後に景気後退

『逆イールド』が注目されるのは、過去において長短金利が逆転すると、景気後退に陥る確率が高まったからです。実際、米国では直近過去3回の『逆イールド』現象の1~2年後に景気後退に陥っています。

『逆イールド』になると、銀行は貸出金利と預金金利の差の利ざやを取りにくくなり、貸し出しを抑制します。これが企業の倒産を増加させ、景気後退につながるともいわれています。

 

【今後の展開】今回の『逆イールド』は、必ずしも景気後退につながらないとみる

 もっとも、現時点で米景気の後退局面入りを示唆するような経済指標はほとんど見当たりません。また、その後の金融市場の動きを見る限り、大きな混乱には至っていません。例えば、ダウ工業株30種平均は大きく反発しているほか、景気後退を示唆するとされる米社債市場は安定推移しています。

 今回の『逆イールド』は、世界的な低金利政策や量的金融緩和によって満期までの期間がより長い債券の利回りが人為的に抑えられている影響があると考えられます。景気予測の指標としての『逆イールド』の有効性については、意見の分かれるところですが、今回の『逆イールド』は必ずしも景気後退につながらないとみています。