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『日銀短観』とは、日本銀行が金融政策運営の参考にするため、3カ月ごとに約1万社の企業に行う経済調査のことです。『日銀短観』では、企業の景況感に加え、売上高、収益、設備投資、雇用の計画などが公表されます。中でも大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が代表的な指標として注目されます。4月1日に発表された19年3月の『日銀短観』では、大企業・製造業の業況判断DIが大幅に悪化しました。

 

【ポイント1】大企業・製造業の景況感は大幅に悪化

海外景気の減速や米中貿易摩擦が背景

 19年3月の『日銀短観』は、大企業・製造業の景況感を示す業況判断DIが12と、18年12月調査の19から7ポイント悪化し、市場予想の13を下回りました。また、3カ月後の先行きの同DIは、4ポイント悪化の8が見込まれています。海外景気の減速や米中貿易摩擦が景況感の大幅悪化につながったとみられます。

 大企業・非製造業の業況判断DIは21と、前回調査から3ポイント悪化しました。先行きの同DIは、1ポイント悪化の20が見込まれています。人件費などのコスト増が逆風ですが、なお高めの水準を維持しています。

 3月の『日銀短観』は、海外景気の減速を背景とした製造業セクターの減速と、底堅い内需を背景とした非製造業セクターの相対的な堅調さを確認する結果となりました。

 

【ポイント2】設備投資計画は底堅さ示す

19年度想定為替レートは108.87円

 18年度の設備投資計画は、大企業・全産業ベースで前年度比+13.9%と、前回からほぼ横ばいでした。19年度は同+1.2%と、設備投資の一段の慎重化は示されていません。

 大企業・製造業の18年度の想定為替レートは、1ドル=109円50銭と、前回調査からほぼ変わらず、19年度は108.87円でした。

 雇用人員判断DI(全規模・全産業ベース)は▲35と、前回から横ばいでした。

 

【今後の展開】『日銀短観』は大幅悪化も株式市場は上昇

『日銀短観』で企業の景況感が悪化したにもかかわらず、1日の株式市場では、米国市場の上昇を好感し、日経平均株価が前日比303.22円高い21,509.03円で終了しました。市場は『日銀短観』の悪化は一時的で、中国景気の持ち直しや米中協議の進展などから先行き国内景気が上向くと読んだ可能性があります。