【今日のまとめ】
- 第2四半期決算発表が出揃った
- JPモルガン・チェースの決算は予想を上回った
- シティグループは株式引受け、M&Aアドバイザリーが好調だった
- ウェルズファーゴは自動車ローンが減少したが業績回復基調にある
- バンク・オブ・アメリカは英クレカ事業の売却の一時要因を除けば好調
- ゴールドマン・サックスは債券部が-40%とアンダー・パフォームした
- モルガン・スタンレーは安定感ある経営でゴールドマン・サックスを抜いた
第2四半期決算が出揃った
銀行セクターの第2四半期決算が出揃いました。今期は各市場のボラティリティが低く、トレーディングで儲けにくい環境でした。それを反映して各社のトレーディング収入は低調でした。
とりわけ注目されるのは、かつて「トレーディングの王者」と言われていたゴールドマン・サックスの不振です。そもそもトレーディングのビジネス自体に殆ど手を染めていないウェルズファーゴを除けば、ゴールドマンのトレーディング収入はメガバンクのグループ内で最低でした。
次に売上高ですが、ここでもゴールドマンはM&Aアドバイザリーや引受けのビジネスでも苦戦し、最下位に甘んじました。これと対照的にバンク・オブ・アメリカは、架空口座スキャンダルの後遺症に悩むウェルズファーゴを追い越して第2位に浮上しています。
純利益ではJPモルガン・チェースの強さが目立ちます。
株主資本利益率では、ウェルズファーゴとJPモルガン・チェースが並んでいます。
JPモルガン・チェース
JPモルガン・チェース(ティッカーシンボル:JPM)の第2四半期決算はEPSが予想$1.59に対し$1.82、売上高が予想243.8億ドルに対し255億ドル、売上高成長率は前年比+4.6%でした。
有形自己資本利益率(ROTCE)は14%(去年の2Qは13%)、ティア1普通株式株主資本比率12.5%(去年の2Qは11.9%)でした。
平均コア融資は前年比+8%、前期比+2%でした。
純金利収入は前年比+8%の125億ドルでした。純金利収入増加の主因は金利上昇と融資成長でした。
非金利収入は前年比+2%の139億ドルでした。投資銀行部門の増収、自動車リースの増収などが寄与しました。その反面、クレジットカードの新規口座オリジネーションコスト、住宅ローン部門の減収、市場部門の減収が足を引っ張りました。
貸倒引当金は12億ドルで、前年同期の14億ドルから減りました。
一株当たりタンジブル・ブックバリューは+6%の$53.29でした。
2017年の純金利収入ガイダンスは前年比+40億ドルを見込んでいます。これはこれまでのガイダンス+45億ドルより低いです。コア融資成長は+8%を見込んでいます。
【コンシュマー&コミュニティ・バンキング】
コンシュマー&コミュニティ・バンキング売上高は52.3億ドルで、前年同期比6.17億ドルの増収でした。住宅ローン売上高は14.3億ドルで、前年同期比-4.95億ドルの減収でした。クレジットカード売上高は47.5億ドルで、前年同期比-1.61億ドルの減収でした。
クレジット・コストは13.9億ドルで前年同期比1.93億ドル増えました。損金計上は11.4億ドルで、前年同期比1.18億ドル増えました。預金成長率は前年比+10%、融資成長率は前年比+3%でした。コンシュマー&コミュニティ・バンキング部門全体の純利益は22.2億ドルで、前年同期比-4.3億ドル、同部門のROEは17%でした。
【コーポレート&インベストメントバンク】
インベストメント・バンキング売上高は16.95億ドルで、前年同期比+2億ドルでした。トレジャリー・サービス売上高は10.6億ドルで、前年同期比+1.6億ドルでした。債券部売上高は32.2億ドルで、前年同期比-7.4億ドル(-19%)でした。ボラティリティの低下によるフロー・ビジネスの減少、クレジット・スプレッドの圧縮などが減収の理由です。株式部売上高は15.9億ドルで、前年同期比-1,400万ドル(-1%)でした。
シティグループ
シティグループ(ティッカーシンボル:C)の第2四半期決算発表はEPSが予想$1.21に対し$1.28、売上高が予想173.8億ドルに対し179億ドル、売上高成長率は前年比+2.0%でした。
純利益は-3%の39億ドルでした。売上高増よりクレジット・コストならびに営業費用の増大の方が大きかったことが減益の原因です。
ティア1普通株式株主資本比率は13.0%でした。2017年の資本政策計画では189億ドルを株主に還元する予定ですが、それでも十分に高い自己資本比率を維持できる見込みです。
営業費用は若干増加の105億ドルでした。
第2四半期のクレジット・コストは+22%の17億ドルでした。
期末の融資残高は6,450億ドルでした。これは去年同期比+2%でした。
バンキング売上高は+19%の48億ドルでした。投資銀行売上高は+22%の15億ドルでした。株式引受け業務の好調、M&Aアドバイザリーの好調などが原因です。
債券部売上高は-6%の32億ドルでした。ボラティリティの減少が減収の原因です。
株式部売上高は-1%の6.91億ドルでした。
グローバル・コンシュマー・バンキング部門の売上高は、北米が+5%の49億ドル、海外が+4%の31億ドルでした。
ブランデッド・カードに対する消費者の反応は好評です。
コンシュマー・バンキングは全体的に良いモメンタムを維持すると思われますが、住宅ローンは前年比較が厳しいです。
ウェルズファーゴ
ウェルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)の第2四半期決算はEPSが予想$1.01に対し$1.07、売上高が予想222.3億ドルに対し222億ドル、売上高成長率は前年比+0.2%でした。
純金利収入は前期比+1.83億ドルの125億ドルでした。貸付金利の上昇が、調達金利の上昇のペースを上回ったのが利ザヤ拡大に寄与しました。また第2四半期は第1四半期に比べて1営業日多かったことも寄与しました。その反面、平均融資残高と投資勘定証券の減少が足を引っ張りました。
純金利マージンは前期比3ベーシスポイント改善し、2.90%になりました。融資残高は9,569億ドルでした。純金利マージンを決定する主要因は預金金利であり、それは今後も貸付金利の上昇より遅行するため、純金利収入は一桁台の真ん中から下の方で成長すると見ています。
総資産利益率(ROA)は1.21%、株主資本利益率(ROE)は11.95%でした。
貸倒引当金は前年同期比-5.19億ドル(-48%)の5.55億ドルでした。損金計上は前年同期比-2.69億ドルの6.55億ドルでした。平均融資残高に占める損金計上比率は0.27%でした。これは去年同期の0.39%から改善しました。
自動車ローンのオリジネーションは45億ドルでした。これは前期比-17%、前年比-45%です。自動車ローンの減少は、貸付基準強化の影響です。
住宅ローンのオリジネーションは560億ドルでした。これは前期の440億ドルより増加しました。住宅ローン申請は830億ドルでした。これは前期の590億ドルから増加しました。
同行は経営合理化計画を進めており、2018年末までに年間で20億ドルの費用圧縮を実現する見通しです。
第2四半期のエフィシェンシー・レシオは61%でした。ターゲットは55~59%を目指しています。
同行の顧客は、モバイル・バンキングにどんどん移行しており、それが支店への来店に取って代わりつつあります。また住宅ローンのオリジネーションをオンラインで実行するサービスを来年から実装します。
架空口座スキャンダルに関しては、集団訴訟は1.42億ドルの賠償金を払うことで示談が成立しました。これは2002年以降のクレームに関して適用されます。カリフォルニア州政府は架空口座スキャンダル発覚以降、同行とのビジネスを凍結していましたが、ウェルズファーゴとの取引を再開しています。
同行は配当を一株当たり39¢へ増配します。また115億ドルの自社株買戻し(83億ドルから積み増し)を実行します。
バンク・オブ・アメリカ
バンク・オブ・アメリカ(ティッカーシンボル:BAC)の第2四半期決算はEPSが予想44¢に対し46¢、売上高が予想218.4億ドルに対し228億ドル、売上高成長率は前年比+7.1%でした。
総融資残高は足踏みしているように見えますが、これは英国のクレジットカード部門を売却したためです。
非金利収入は+6%の118億ドルでした。
貸倒引当金は7.26億ドルでした。これは9.76億ドルから減りました。
損金計上は9.08億ドルでした。これも9.85億ドルから減りました。
損金計上比率は0.40%でした。これは0.44%から改善しました。
事業法人向け貸付の平均残高は+5%の8,270万ドルでした。
預金残高の伸びも止まってしまっているように見えるのですが、これも英国のクレジットカード部門を売却したことが原因です。
総資産利益率(ROA)は0.93%、株主資本利益率(ROE)は8.0%、有形自己資本利益率は11.2%でした。エフィシェンシー・レシオは60%でした。これは去年同期の63%から改善しました。
債券部売上高は-14%、株式部売上高は+3%でした。
一株当たりブックバリューは+5%の$24.88でした。一株当たり有形ブックバリューは+6%の$17.78でした。
ゴールドマン・サックス
ゴールドマン・サックス(ティッカーシンボル:GS)の第2四半期決算はEPSが予想$3.39に対し$3.95、売上高が予想74.7億ドルに対し78.9億ドル、売上高成長率は前年比-0.6%でした。利益のアップサイドは、主に投資勘定で保有していた資産を売却、「益出し」を行ったことが原因です。その意味で、今回の「利益の質」は低かったです。
株主資本利益率は8.7%でした。
インベストメント・バンキング売上高は前年比-3%の17.3億ドルでした。うちM&Aアドバイザリーは-6%の7.49億ドル、引受けフィーは前年比±0%の9.81億ドルでした。株式引受けフィーは転換社債引受け低迷で微減でした。
インベストメント・バンキング・トランザクションの受注残は2017年第1四半期より増加しました。
インスティチューショナル・クライアント・サービス部門売上高は-17%の30.5億ドルでした。うち債券為替コモディティ客注執行は前年比-40%の11.6億ドルでした。金利、コモディティ、クレジット商品の純収入減が響きました。その反面、株式は+8%の18.9億ドルでした。現物株、デリバティブともに増収でした。
投融資部門売上高は「益出し」オペレーションにより+42%の15.8億ドルでした。
営業費用は前年比-2%の53.8億ドルでした。このうち非報酬費用は21.5億ドルでした。
モルガン・スタンレー
モルガン・スタンレー(ティッカーシンボル:MS)の第2四半期決算はEPSが予想77¢に対し87¢、売上高が予想90.5億ドルに対し95億ドル、売上高成長率は前年比+6.5%でした。
【インスティチューショナル・セキュリティーズ部門】
インスティチューショナル・セキュリティーズ部門の税引き前利益は14億ドルでした。去年同期は15億ドルでした。売上高は48億ドルでした。去年同期は46億ドルでした。
内訳をみると:
インベストメント・バンキング売上高は14億ドルでした。去年同期は11億ドルでした。
セールス&トレーディング売上高は32億ドルでした。去年同期は33億ドルでした。そのうち株式セールス&トレーディングは22億ドルでした。去年は21億ドルでした。債券セールス&トレーデンングは12億ドルでした。去年は13億ドルでした。
【ウエルス・マネージメント部門】
ウエルス・マネージメント部門税引き前利益は11億ドルでした。去年同期は8.59億ドルでした。売上高は42億ドルでした。去年同期は38億ドルでした。
【運用部門】
運用部門税引き前利益は1.42億ドルでした。去年同期は1.18億ドルでした。売上高は6.65億ドルでした。去年同期は5.8億ドルでした。