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『デレバレッジ』とは、過剰債務の削減を指します。中国ではリーマンショック後、地方政府や企業の債務が急速に膨らんだため、政府は2017年以降『デレバレッジ』を本格的に推進しています。しかし、『デレバレッジ』を進める中、米中貿易摩擦の影響もあり、中国経済は減速しています。政府は『デレバレッジ』の路線を維持しながらも、今年に入り中小・零細企業や民間企業への融資増を求めるなど、景気を下支える方針です。
【ポイント1】リーマンショック後、急速に膨らむ地方政府や企業の債務
社会融資総量の対GDP比は、2008年の119%から2018年には223%へ
中国は、2008年のリーマンショック後、4兆元にも及ぶ大規模な財政出動を行いました。その結果、地方政府や企業の債務が急速に膨らみました。これを、銀行融資に加えて影の銀行とも呼ばれるシャドーバンキングを含む融資全体の規模である社会融資総量で見てみると、2008年には対GDP比で119%だったものが、2018年には223%へと増大しています。こうした中国の過剰債務に対して国際通貨基金(IMF)などは警鐘を鳴らしています。
【ポイント2】『デレバレッジ』が進む中、米中貿易摩擦も加わり中国経済は減速
2017年以降、『デレバレッジ』は本格化
過剰債務の積み上がりに対し、習近平政権は『デレバレッジ』を進めています。特に、2017年以降はシャドーバンキングなどを対象とした債務削減策が本格化されました。例えば、委託融資量は2016年の前年比+19.8%から2018年は同▲11.5%へ、信託融資量は2016年の同+15.8%から2018年は同▲8.0%へと減少に転じています。
一方で、こうした『デレバレッジ』の動きに、昨年来の米中貿易摩擦の影響が加わり、中国経済は足元で減速しています。最近では、中国人民銀行の易綱総裁が、急速な債務削減は中小・零細企業や民間企業の融資難・資金調達コスト高となり、社会の信用収縮を招き、経済の下押し圧力が高まった、と述べています。
【今後の展開】政府は『デレバレッジ』の路線は維持しつつ、景気対策で下支え
中国政府は2019年に入り、金融機関に対して企業向け融資の積極化を求めています。例えば、今月開催された全国人民代表大会(全人代)では、国有大手銀行による中小・零細企業向け融資を30%以上増やす方針が示されました。加えて、増値税(付加価値税)の税率や公的年金保険料の企業負担分の引き下げなどを発表しました。政府は、今後も『デレバレッジ』の路線は維持すると見られますが、対象を絞った融資を増加させることや企業への減税などを通じて景気の下支えを行うと考えられます。