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 英国は2016年6月の国民投票で、欧州連合(EU)からの離脱(『Brexit』)を選択し、現在離脱交渉を進めています。2019年3月29日に当初の離脱予定日が迫る中、3月12日~14日に『Brexit』を巡る採決が英国議会で行われました。現状の離脱案には反対、合意なき離脱にも反対、離脱予定日を延期させる、という結果になりました。混迷が続く『Brexit』の交渉は今後どのようになっていくのでしょうか?

 

【ポイント1】争点は北アイルランドとアイルランド間の“安全策”の是非

EUに縛られることになるとして、保守党内の離脱強硬派などが反対

 EUとの離脱案は、これまで英国議会で議論が重ねられるも、たびたび否決されてきました。その大きな争点の1つが、陸続きとなっている英領北アイルランドとアイルランドの間に、厳重に管理された国境を設けることを回避する“安全策(バックストップ)”の是非です。

 このバックストップは、従来の案では、英国がEUから離脱した後、2020年末までとされる移行期間中に具体策がまとまらなかった場合に、移行期間を延長することやEUルールを適用することなどが挙げられていますが、これでは結局EUに縛られることになるとして、保守党内の離脱強硬派などが反対しています。

 

【ポイント2】英国からの撤退を決める企業が相次ぐ

離脱案に共同文書が追加され、リスクは軽減されたとの見方はあるが…

 離脱案の採決前日の11日には、EUが英国を無期限にバックストップに拘束しないことなどを確認する共同文書を追加することに合意しました。これにより、コックス英法務長官は英国がバックストップに縛られるリスクは軽減されたとの見解を示しています。

 また、一連の議会採決には法的拘束力はないものの、“合意なき離脱”が一旦避けられたことで市場には一定の安心感が広がりました。しかし、英国に製造拠点を置く企業などでは、英国からの撤退を決めるケースが相次いでおり、このまま離脱延期の解決策が議会で得られなければ、経済の混乱は続くと懸念されます。

 

【今後の展開】条件付きで離脱期限が延期されたが…『Brexit』は混迷を極める

 一連の採決により、英国側の意向としては『Brexit』の期限を2019年6月末まで延期することとなりました。ただし、このためには英国議会が離脱案を3月20日までに承認することが条件です。離脱案はこれまで2度にわたり大差で否決されており、20日までの短期間で可決させることはかなり難しいと見られます。20日までに英国議会が離脱案を承認しない場合、英国政府は6月末よりも先の離脱延期をEUに求めることになると見られます。しかし、EUは再交渉に応じない姿勢を明確に示し、離脱延期にも明確な理由が必要と主張しており、“合意なき離脱”の可能性もくすぶります。合意ある離脱に向けて、『Brexit』は混迷を極める状況が続きます。