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米『雇用統計』は、米労働省が毎月発表する、雇用関連の経済指標です。『雇用統計』は、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策の決定に大きな影響を与えるため、金融市場は、その発表で大きく変動することが多く、最も注目される材料の1つです。2019年2月の『雇用統計』は非農業部門雇用者数の前月比が事前予想の18.0万人増を大幅に下回り、2.0万人増となりました。
【ポイント1】雇用者数は2万人増と大きく下振れ
天候要因や景気減速の影響
2019年2月の非農業部門雇用者数は、前月比2.0万人増と、ブルームバーグ集計による市場予想の同18.0万人増を大幅に下回りました。前月分は30.4万人増から31.1万人増に上方修正されました。
1月が暖冬の影響で建設業や小売業、レジャーなどの雇用が上振れた一方で、2月は米中西部を大寒波が襲ったことなどから、天候要因による反動が表れたことが影響したと見られます。
ただし、製造業、小売業などの雇用は低調で、足元の経済活動減速の影響を受けている可能性がある点には注意が必要と見られます。
【ポイント2】失業率は0.2%ポイント改善
緩やかな賃金上昇続く
失業率は、1月の4.0%から改善し、3.8%となりました。これは、米政府機関の一部閉鎖による一時的影響が解消したことによるものと見られます。
また、賃金は前月比0.4%増、前年比3.4%増と、いずれも市場予想を上回りました。ただし、労働投入量が前月比0.3%減少しているため、労働投入量に平均賃金を掛け合わせた総賃金は前月比0.1%増と、わずかな伸びにとどまりました。
【今後の展開】1-3月期は下振れも、米景気はなお底堅い
『雇用統計』の発表を受けて、8日の米国株式市場は取引開始直後に、一時220ドル超下落しましたが、引けにかけて持ち直しました。世界経済悪化への懸念が高まる中、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策スタンスをハト派に転換していることが、米景気への不透明感を和らげていると見られます。
ただし、米中通商問題などの影響から、1-3月期は米景気の減速が見込まれており、しばらくは景気減速の動きと、FRBのハト派転換による金融緩和効果を受けた景気改善への期待感の綱引きの展開となりそうです。『雇用統計』も弱めの数字が続く可能性があり、注意が必要です。