ヒット作不在などでモバイルゲーム市場減速へ、政策的逆風も続く

 中国のモバイルゲーム市場は2015-18年に年率平均38%の成長を遂げたが、BOCIは続く18-21年について大幅な減速を見込み、10%台前半との予測を示している。政府当局は18年12月、ようやくオンラインゲームの配信認可を再開したものの、今後も政策面で監督強化が続くと予想。これがゲームの供給状況やイノベーションに影響する可能性を指摘した。ほかにモバイルゲームの普及率がすでに高水準に達していることや、新たな大ヒット作の不在も減速要因になるとの見方。18年1-9月にはゲーム銘柄のモバイルゲーム収入が軒並み急減速しており、こうしたトレンドが10-12月も続く見通しを示した。一方、PCゲームに関してはユーザー基盤の縮小を受け、18-21年の年平均成長率が1桁台前半に減速するとみている。個別ではオンラインゲームおよび娯楽分野で圧倒的なリーダーシップを誇るテンセント(00700)をトップピックとしている。

 国家新聞出版広電総局(GAPP)は12月、オンラインゲームの認可を再開したが、BOCIは政策的な逆風は今後も続くとみる。実際、GAPPの認可数は18年12月、19年1月に月平均164件と、認可停止前の726件を大きく下回った。GAPPと教育部が新規ゲーム認可数の数量規制を行う方針を発表したことも一段の不確実要因となっている。

 一方、18年のモバイルゲーム市場の成長率について、BOCIは15%への減速を見込み、その一因として新たな大ヒット作の不在を挙げている。モバイルゲーム市場は15-18年に人民元建てで825億元拡大したが、うち約5割に寄与したのが『王者栄耀(Honor of Kings)』。18年のトップ10セールスランキングをみても、15年8月リリースの『王者栄耀』が依然首位を維持しており、15年3月リリースの『夢幻西遊』が2位。また、トップ10の顔ぶれの中で、PCゲームIP(IP=知的財産)あるいはマンガIPからの派生ではない作品は、『楚留香』『乱世王者』『陰陽師』のわずか3作品だったという。19年の新作動向に関してもBOCIは慎重な見方。有望なPCゲームIPの大半がすでにモバイルゲームに移植済みであることなどをその理由としている。

 このほか、モバイルゲームの浸透率の高さも市場全体の減速要因の一つ。中国音数協遊戯工委(GPC)、伽馬数据(CNG)の調査では、国内のユーザー数は18年に6億500万人(モバイルインターネット利用者数は7億8,800万人、携帯デバイスの月間アクティブユーザー数は11億3,100万人)。普及率はすでに推定53-77%に達したという(米国では18年上期に59%、日本は58%)。

 ゲームセクターのトップピック銘柄は、ライブストリーミング大手2社への投資を通じてこの分野で圧倒的なリーダーシップを誇るテンセント。国内eスポーツ市場を主導し、自社ゲームIPの動画・マンガ・アニメへの利用も進める。BOCIによれば、19年下期には前年実績が正常化するのに伴い、同社の利益成長ペースの加速が期待できるという。