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米連邦準備制度理事会(FRB)は、商業銀行の融資担当責任者を対象に、銀行の『融資基準』や借手の資金需要の動向に関するヒアリング調査を四半期ごとに実施しています。人間に例えれば血液に相当する資金が、経済の中を正常に循環しているかどうかを検査するのが目的です。直近の調査は2018年12月から19年1月にかけて実施されました。それによれば、商業銀行は融資基準を引き締めているようです。
【ポイント1】『融資基準』は全般的に強化の方向
住宅ローンの一部を除き、いずれの融資先に対しても基準を強化
直近の調査結果によれば、「『融資基準』を強化」との回答比率から「『融資基準』を緩和」との回答比率を差し引いた融資基準総合DI(※)は+4.0となりました。『融資基準』を強化した銀行の数が、基準を緩和した銀行の数を上回ったこと、つまり融資をする際の審査基準が強化されたことを示しています。
融資基準総合DIがプラスになったのは、17年4月調査以来のことになります。これまでの利上げの効果のほか、米中通商摩擦の影響による経済の悪化、それに伴う貸し倒れの増加等が懸念された可能性があります。
融資先では、政府保証ローンといった一部の住宅ローンを除き、商工業、商業用不動産、消費者向けのいずれも強化されました。
【ポイント2】資金需要は大きく落ち込む
銀行に対する資金の依存度は低下しているもよう
一方、「資金需要が拡大」との回答比率から「資金需要は縮小」との回答比率を引いた資金需要総合DI (※)は▲20.7でした。同DIは17年1月調査以来9四半期連続のマイナス、しかもマイナス幅は過去9四半期のうちで最大となっています。
商工業向け、商業用不動産、住宅、消費者向けの全てのカテゴリーで資金需要が減退しました。
【今後の展開】融資基準DIは利上げの終了を示唆
融資基準総合DIと、前年比で測った実質GDP成長率との間には、DIが上昇、つまり『融資基準』が強化されれば、成長率が低下するという関係が認められます。しかも融資基準DIが、成長率に2四半期ほど先行しています。
この関係から試算すると、米国の実質GDP成長率は19年前半まで前年比+3%前後で推移した後、同年後半には同+2%弱まで鈍化する見通しです。物価の安定と合わせて考えると、FRBが今後、利上げを再開する可能性は低いと判断されます。
※融資基準総合DIと資金需要総合DIは、商工業、商業用不動産、住宅、消費者向け融資の各融資基準DIおよび資金需要DIを、融資量全体に占める各融資量の割合をもとに加重平均した指数で、三井住友アセットマネジメントが算出しました。