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『一般教書』演説とは、アメリカ合衆国において、大統領が連邦議会の上下両院の議員を対象に、経済、外交など幅広い政策課題や方針について説明する演説です。 『一般教書』は「年頭教書」ともいわれ、「予算教書」、「大統領経済報告(経済教書)」と合わせて三大教書と呼ばれることもあります。2月5日に行われたトランプ大統領の就任3年目の『一般教書』演説では、団結と協力を求める主張が目立ちました。
【ポイント1】大型減税の実施、雇用創出といった成果を強調
米国民と議会に団結と協力を要請
2019年2月5日に、トランプ大統領が上下両院の合同会議で行った『一般教書』演説は、従来のような敵対的なトーンがなりを潜め、米国民や上下両院に団結と協力を求めるような主張が目立ちました。
冒頭では、大型減税の実施や雇用の創出といった成果を披露しました。オバマ前政権が導入した医療保険制度、いわゆるオバマケアについては、強制加入義務を廃止したと訴え、自らの成果としました。
【ポイント2】最も多くの時間が割かれたのは移民政策
経済政策への言及は、インフラ整備投資に限定
今回の『一般教書』演説のなかで、最も時間が割かれたのは、移民問題でした。そのなかで、「コンクリートの壁ではないにしても、物理的な障壁を建設する」と述べています。言い方はやや柔らかくなったものの、不法移民対策には壁が最も効果的な方法であるとの従来からの見解に変化はないことが窺われます。
一方、経済政策への言及は、景気拡大の持続に満足してか、ほとんどありませんでした。追加の減税政策は念頭にないようで、唯一、社会資本(インフラ)整備投資の強化に触れるにとどまっています。トランプ大統領が、インフラ投資強化が必要だと述べた場面では、民主党サイドも拍手を送りました。インフラ投資の重要性という点では、大統領と民主党の間に意見の相違はないようです。今後の課題は、その財源と考えられます。
【今後の展開】通商政策への言及は僅か、市場の反応も薄い
通商問題に関しては、中国との貿易交渉に言及し、構造的な改革を求めましたが、特に目新しい内容はありませんでした。日本や欧州への言及はなく、通商政策に触れた時間は僅かでした。
『一般教書』演説翌日2月6日の米国市場の株価は、前日までの上昇の反動で下落しました。ただし、今回の『一般教書』の内容に新味はなく、演説そのものへの株価の目立った反応はありませんでした。