先月の日本出張時、ホテルでテレビをつけるとどのチャンネルも「一線を越えたかどうか」ばかり。このコラムでも繰り返し指摘している通り、もはやメディアというのはさまざまな情報を公平に伝えるものではなく、視聴率や購読者、クリックが獲得できるのであればそれを徹底的に取り上げるしかない、競争激化によってそれほど余裕がなくなってきているものだ、ということをつくづく感じました。このような時代の中で我々が公平で正確な情報を得ようと思えば、できるだけ自分自身で元のソースを確認しにいくしかない、ということなのです。

 先週末シャーロッツビルでの衝突事件後のトランプ大統領の対応についても、メディアの報道ではなく、私は実際の発言とツイッターのみをフォローするようにしていました。実際、一部誇張気味のメディア報道とは裏腹に、先週末や今週月曜日の声明の段階ではトランプ大統領の対応は十分挽回可能な範囲だったと思います。しかし、火曜日の記者会見とその前後のトランプ大統領の言動は衝撃的で、とうとう一線を越えてしまったか、と感じざるを得ないものでした。

 去年の大統領選挙前にも記しましたが、予算をはじめとする経済政策成立において大きな力を持っているのは議会です。大統領に与えられているのは拒否権のみです。しかしメディアでは圧倒的に大統領が大きく取り上げられるため、あたかも、大統領が考えている経済政策を何でも実行できるような印象を持っている方が多いのではないでしょうか。メディアでよく、「トランプ大統領は就任後、主要政策を何も成立させることができていない」と報じられるのも、そのような誤解を招く一つの要因でしょう。