労働賃金の上昇とFRB

 今回は、平均労働賃金に注目したいと思います。ただし、これまでとは別の意味で。労働賃金が上がると消費活動が活発になるからインフレ率も上昇する。インフレ率が上がればFRB(米連邦準備制度理事会)は利上げする、というのがこれまでの考えでした。給料が高くなって困るという人はいないと思いますが、利上げ休止を決めてしまったFRBにとっては、インフレ率が上がり続けてしまうと、かえって政策運営が難しくなって困ることになりそうです。

 

米労働市場はすでにピークを迎えた?

 米労働省のJOLTS(求人労働異動調査)によると、米国の労働市場は2018年の第3四半期にピークを迎え、第4四半期にはすでに減速を始めたことを示しています。12月のNFPが大幅増だったことと一見矛盾しているようですが、雇用拡大サイクルの終了直前では求人率が減少したにもかかわらず、雇用が増加するのはよくある現象です。

 求人率の減少は、企業業績が悪くなったというよりも、離職率が減っていることが理由と考えられています。会社を辞める人が少なくなったので新規採用も減ったということです。

 ではなぜ離職率が減ったのか、それは次の仕事が見つかりにくくなったからで、「辞めても次にいい仕事が見つかる」といった労働市場に対する期待が低下していることを意味します。昨年12月のデータによると、離職率は約1年ぶりに低下しました。これは労働市場の成長が止まった可能性を示唆するもので、FRBも重要視しています。

 今回の雇用統計は、今後のFRBの政策を見通す上でも、貿易戦争の影響を考える上でも、チェック項目がたくさんありそうです。