悲観の修正で中国関連株の戻りに期待するなら

 昨年12月の米中首脳会談を受け、米国からの輸入拡大、輸入関税引き下げ、非関税障壁撤廃などで、中国が「対米貿易黒字を2024年までにゼロにする」との方針を示したと、1月18日、報道されました。

 米国の対中輸入関税引き上げ期限である3月1日に向け、知的財産権の保護、強制的な技術移転、サーバー攻撃に対する規制強化、中国企業への補助金削減などで歩み寄ることができれば、米中が一定の合意に達する可能性はあります。

「貿易戦争に勝者はいない」と言われる通り、米中紛争の継続は、中国と米国双方の経済、産業界、消費者が悪影響を被ります。

 一方、「トランプ米大統領は自身の仕事ぶりへの評価を測る指標として『支持率』と『ダウ平均』の動向を重視している」と、昨年12月10日のウォールストリート・ジャーナル電子版が報道。株価が急落すると政権内の高官を呼び付け、米中間の緊張のせいではないことを確かめた」とのことです。

 1月3日の株価急落時は、大統領の意向を受けたムニューシン米財務長官が、大手金融機関幹部と情報交換をして、市場安定化を模索する姿勢を示し、トランプ米政権内で「(米中貿易交渉の進展次第で)対中関税引き下げを提案している」との発言を報道されました。

 2020年の大統領再選を目指し、景気と株価の安定を望むトランプ大統領は最近「中国との交渉は良好に進んでいる」などとツイートしています。大統領選挙を前に、ディール(交渉)で得た成果を米国民や支持者に訴えたいものと考えられます。3月1日に米中貿易紛争が「停戦」や「関係改善」に進展すれば、過度の悲観で下落した日本の中国関連株が買い戻される可能性はあります。

 図表3は、日経中国関連株指数を構成する50社の中から、来年度(2020年3月期)予想EPS(1株当たり利益)の前年比増益率で降順に示し、かつ2桁以上の増益率が見込まれている銘柄のみを一覧しました。

 中国関連株の中でも、商品競争力や外需先(国)の分散で来年度に業績改善が見込まれている銘柄に注目したいと思います。

図表3:中国関連株の来年度業績見通し

# コード 銘柄名 株価 1年前比
騰落率
今年度
PER
来年度
PER
来年度
予想増益率
1 9104 商船三井 2,630 ▲34.1 17.7 8.4 110.9
2 6971 京セラ 5,958 ▲20.9 19.6 14.6 34.1
3 6501 日立製作所 3,390 ▲26.9 10.0 7.5 32.9
4 7011 三菱重工業 4,218 ▲4.8 17.9 13.8 29.4
5 4911 資生堂 6,032 2.4 32.0 26.0 23.1
6 6981 村田製作所 13,875 ▲13.1 14.0 11.4 22.5
7 6762 TDK 7,610 ▲25.3 11.9 9.9 19.5
8 3382 セブン&アイ・ホールディングス 4,768 2.4 19.9 17.1 16.7
9 8267 イオン 2,191 13.2 57.0 49.2 15.8
10 9983 ファーストリテイリング 51,230 ▲1.8 31.5 27.4 14.8
11 7956 ピジョン 4,085 ▲9.7 31.0 27.2 14.0
12 5332 TOTO 4,030 ▲37.4 20.5 18.0 13.6
13 3402 東レ 801 ▲28.5 13.3 11.9 11.7
14 6367 ダイキン工業 11,845 ▲15.6 18.3 16.4 11.4
15 8113 ユニ・チャーム 3,248 6.0 31.1 28.0 11.0
*日経中国関連株指数を構成する50銘柄について「来年度予想増益率」の降順に表示
*PERは予想。単位は株価は円、PERは倍、騰落率と増益率は%。
*予想PERと予想増益率のベースとなる予想EPSは市場予想(Bloomberg集計平均)
出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(2019年1月23日)

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