4.原油の下落

次は、株価への影響が大きい原油価格のデータを見て。

WTI原油価格終値(日次) 2017/12/22~2018/12/24

Bloombergデータより楽天証券作成

ひな:10月に入ったとたんに下落!
先生:きっかけは、10月2日起きたあの事件。

しんた:あ……。
ひな:あの怖いやつだ!

くわしくは「サウジ記者殺害でリスク上昇も、上がらぬ原油価格のナゾの裏側」>>

ひな:「サウジアラビアの記者殺害」のニュースですね。
しんた:これ、株の下落と関係するんですか?

先生:「産油国同士のバランスが崩れると、原油価格は下がりやすい」。
しんた:そっか。原油価格が下がると、関連企業の収益が悪化して、株価も下がるってことか。

先生:そう。そして今回は、「厄介なオマケ」がついてきたのよ。
ひな:厄介なオマケ……?

先生:原油とシェールガスって、価格の上下動も、業者間の競争も、どっちも激しいの。だから、利益が薄いし、いざと言うときの現金の蓄えなども少ない企業が多い。つまり、信用力が低い企業が多いのね。そんな状況で、2018年10月以降、原油価格は急落、金利は3%を超えました。さて、何が起きる?

しんた:原油とシェールガスの会社の収益が悪化。利息の支払いが増加するから、さらに収益が悪化。そして株価は下落、って感じかな?

先生:その通り。それが起こりつつある。

ひな:ええ!? じゃあ株価下落は止まらないの?
しんた:でも原油価格の下落がストップすれば止まるってことじゃない?

先生:予想以上に下げたことで、買おうとする人たちが出てくる可能性もあるね。
ひな:まだ株価は動きそうだねー。

 

厄介なオマケの正体

先生:信用力が低い米国の石油関連企業は、銀行からの借り入れや、社債を発行して必要な資金を作っているの。別名、信用力が低い企業の銀行からの借り入れは「バンクローン」、社債は「ハイイールド社債」って呼ばれている。重要なポイントは、米国のバンクローンとハイイールド社債は、活発に売買されていること。日本では、銀行のローンはほとんど売買されていないし、社債は一定以上の信用力がある企業しか発行できないから、ちょっとイメージしにくいかもしれないけどね。

しんた:なるほど。ってことは、「収益が悪化、利払いは増加、株価は下落」の次に来る厄介なオマケの正体は、「信用力が低い企業のハイイールド社債やバンクローンの売買価格が下がる」ってことですか。

先生:正解。

ひな:でも、社債やローンの売買価格が多少下がったところで、どんな影響があるの?
先生:ハイイールド社債やバンクローンは、株や債券ほど売買の参加者が多くない。参加者が多くない、ってことは、値段が一方向に動き始めたら、止まらない可能性が高い。

ひな:ひょえー。
先生:そこで、バンクローンの売買流通価格の推移がこれ。

S&Pバンクローン売買価格終値(月次) 1998/12~2018/12

Bloombergデータより楽天証券作成

しんた:何?この下げ方!リーマンショックのとき!!
ひな:下がるのも、上がるのも、すごい角度ですね。
先生:それそれ!ひなちゃん! さっき言ったとおり、一方向に動いたら止まらないでしょ?

しんた:そっか、先生。参加者が少ないから、値段の上下が他の商品よりも荒いんですね。しかし、バンクローンの売買価格で見ると、今回の下落はそれほど深くないような……。
先生:下のグラフを見て。

バンクローンETF終値(週次) 2011/3/4~2018/12/21

Bloombergデータより楽天証券作成

ハイイールド社債ETF終値(月次) 2007/4~2018/12

Bloombergデータより楽天証券作成

しんた:最近も下がってますね…。
ひな:不安ですね。

先生:ちなみに、前回の原油安では、2016年の1月と2月に、30ドル割れを記録しているわ。上のグラフ、その時期に安値をつけているわね。
ひな:今回、既に同じ水準まで下がってます!